【SKIPの知財教室(IP Hack ®)】じっくり®ヒストリー 超伝導体ディスクを使った重力遮蔽装置の発明者 ユージーン・ポドクレトノフ(反重力装置の秘密研究を行うが、マスコミによるスクープで研究所から追い出されて、今も世界のどこかで反重力装置の研究をしているマッドサイエンティスト)
2025.06.16

AKI
私たちの身の回りには非常に多くの画期的なモノや手法であふれています。これらはすべて先人たちのアイデアによって実用化された数多くの発明のおかげです。宇宙に存在する星には、必ず重力が存在します。重力があることによって、私たちが地面を足をついて歩けるようになり、空中にある物体は地面に向かって落下します。宇宙空間は無重力であり、浮遊した状態になることは多くの人が夢見る現象ではないでしょうか。地球上において、無重力空間を再現しようとする研究も行われています。1992年、超伝導体ディスクを使った重力遮蔽装置の実験が行われました。この実験を行ったのは、ロシアの技術者ユージーン・ポドクレトノフです。今回はそんなユージーン・ポドクレトノフの生涯を振り返っていきましょう。
ユージーン・ポドクレトノフの前半生(反重力装置の秘密研究を行うが、マスコミによるスクープで研究所から追い出される)
ユージーン・ポドクレトノフは、1955年ロシアで生まれました。モスクワのメンデレーエフ化学技術大学を卒業した後、ロシア科学アカデミーの高温研究所で15年間を過ごし、フィンランドのタンペレ工科大学で材料科学の博士号を取得しました。卒業後、1997年に退学するまで、大学の材料科学部で超伝導研究を続けました。その後はモスクワに戻り、エンジニアとして就職しました。
1992年、ポドクレノフは見た目上の重力変化に関する最初の論文を発表しました。この論文はほとんど注目されませんでしたが、1996年に新しい論文を投稿しました。最初の論文よりも大きな効果を得られたとする内容で、2%の重力減少に成功したと記述していました。しかしこの論文の内容を巡って、業界では論争が巻き起こることになります。二番目の論文を作成するにあたって、ポドクレトノフは何人かのスタッフを雇っていました。そのうちの1人、イアン・サンプルは提出された論文の内容をイギリスの新聞「サンデーテレグラフ」で科学特派員を務めるロバート・マシューズに内容を漏洩してしまっていたのです。
1996年、マシューズはポドクレトノフが反重力装置の発明に取り掛かっていることを発表し、研究所の発表よりも先に世界に研究の内容が知れ渡ってしまうことになります。ポドクレトノフが所属していた研究所の所長は、研究内容はポドクレトノフが独自に始めたことであり、研究所は関与していないとする声明を発表。これについて、ポドクレトノフは重力を完全に遮蔽したのではなく、ただ影響を軽減しただけだと主張しました。
しかしこの論争でポドクレトノフには批判が殺到し、彼は論文を撤回せざるを得ませんでした。彼の主張は根拠に乏しく、そのせいで大炎上を巻き起こしたとされています。彼が研究室を去った理由は明らかにされていませんが、この出来事が大きな理由ではないかと言われています。
ユージーン・ポドクレトノフの後半生(2002年にボーイングがGRASPと呼ばれる回転する超伝導体に基づく重力遮蔽装置を試作していることがスクープされる)
1997年、ポドクレトノフはチャールズ・プラットからの電話インタビューを受けました。彼は重力遮蔽実験について、「トロントとシェフィールドの大学の研究者によって再現された」と主張しましたが、世間的には信用されませんでした。
シェフィールドにおける実験は、存在するかもしれない異常な影響を観察することを目的としたもので、関連するチームには十分な大きさのディスクを製造する設備と元のディスクを回転させる手段を模倣する技術に欠けていたために、部分的な追試としてだけ意図されていました。これを論文を出した当時に公表しなかった理由として、実験にあたった研究者たちが主流の科学コミュニティによって批判されないように、静かにしていたことを挙げました。ポドクレトノフは2000年にシェフィールドチームを訪問したと言われており、ポドクレトノフ効果を達成するために必要な条件や、彼らが遂行できなかった条件について助言を行いました。
その後、BBCのニュース記事において、ボーイングの研究者がGRASPと呼ばれる回転する超伝導体に基づく重力遮蔽装置を試作しようとするプロジェクトに資金を提供していたとする報道が流れました。ボーイング社はPopular Mechanics誌の記事で資金提供を否定しましたが、極秘プロジェクトについてコメントできないと回答しました。
2002年、ジェーン・ディフェンス・ウィークリーのクック記者はボーイングの内部プロジェクトGRASPについて報告し、ポドクレトノフの主張の妥当性を評価する記事を出しました。ジェーン・ディフェンス・ウィークリーによる説明会では、「重力変更が現実のものとなると、航空宇宙ビジネス全体が変わる」と述べられました。
1997年にタンペレを離れて以来、ポドクレトノフはメディアへの露出を避けています。現在彼がどのような活動をしているのかは不明ですが、タングラス工業株式会社に所属し超伝導体の研究を行っているという報告もあげられています。
今回は、重力遮蔽装置の実験について提唱し、論文を巡って業界に論争を巻き起こしたユージーン・ポドクレトノフの生涯を振り返りました。論文の内容自体は証拠がなく、それに伴って大きな騒動となってしまいましたが、その後に評価が覆り、現在では重力を減少させる研究が進められています。今後、もしかしたら反重力装置が完成して、自由に空を飛べる世界がくるかもしれません。


