PCT出願は、原則は、全ての加盟国を指定することになっていますが、願書で「日本を除外する」という項目をチェックすることによって、日本を指定から外すことが可能です。
最も多いパターンは、国内出願を行って、その約1年後に、国内出願を基礎としたPCT出願を行うというものです。PCT出願の際に、日本を指定せずに国内出願を残すか、それとも日本を指定するかの選択を行ないます。
日本を指定すると、国内優先によるみなし取下げ規定によって国内出願が取り下げられてしまうので、PCT出願のみが生き残ります。優先日から30ヶ月以内に日本に国内移行すると、国内特許の審査を受けることができます。
多くの場合、PCT出願時に明細書に大幅な変更がある場合は、日本を指定してPCTへの乗り変えを行い、明細書の修正が少ない場合には、日本を指定せずに、国内出願を残すというものです。
PCT出願で日本を指定することには、少なくとも次のメリットがあります。
1.特許期間の延長。PCT出願日から起算されるためです。
2.審査請求期間の延長。PCT出願日から起算されるためです。
3.明細書内容の改善。多かれ少なかれ、明細書を見直せば、その内容はブラッシュアップされます。
4.審査請求料の低減
審査請求料は、日本の国際出願についてはかなりお安くなっています。請求項が10個の場合、63,000円安くなります。
出願審査請求 118,000円 +(請求項の数× 4,000円)
(特許庁が国際調査報告を作成した国際特許出願) 71,000円 +(請求項の数× 2,400円)
デメリットは、国内移行の際に特許事務所に高額の移行手数料を請求されること、のみだと思います。移行手数料は、一般に、10万円~15万円くらいだと思います。国内移行の特許庁費用が15000円ですので、従来の料金体系では、料金面に関しては、自己指定することもメリットがないと言えます。
では、移行手数料が1万円だとするとどうなるか?国内移行にかかる総費用25000円なので、請求項数が1個の場合でも、審査請求料の減額分よりも安いです。請求項数が15個くらいの出願だと、圧倒的に自己指定→国内移行の方が安くなります。
つまり、費用が安くなる上、長い権利期間、遅い審査請求期限、より優れた明細書という利益が同時に得られることになります。
では、移行手数料1万円は可能でしょうか?
これは、非常に容易です。国内移行は、PCTの出願番号を記載した書面を1枚提出するだけの完全に事務的な手続きだからです。
昔は、審査請求料が今の半額だったので、上記のような戦略はあまり意味がなかったですが、今は審査請求料が高額なので、上記の手続きが効果的になりました。
弊所では、クライアントの利益を考え、移行手数料を1万円にしました。
2015/9/24追記:
意匠への変更出願の可能性がある案件については、自己指定をすべきかどうか、慎重に検討すべきです。