ブログ

【SKIPの知財教室(IP Hack ®)】じっくり®ヒストリー オルタネーターを発明した ガリレオ・フェラリス(交流電力システムのパイオニアとしても知られる天才電気エンジニア)

IP HACK

2024.10.25

AKI

私たちの身の回りには非常に多くの画期的なモノや手法であふれています。これらはすべて先人たちのアイデアによって実用化された数多くの発明のおかげです。自動車やオートバイなど、人間が操縦して動かすための機械には動力として電気が使われています。燃料で動くものもありますが、ガソリンや軽油を使う場合でも電気は欠かせません。多くの場合、乗り物には電気を生み出す機構が搭載されています。この発電機を「オルタネーター」といい、

ダイオードなどを使った整流器で直流へと整流される場合や、前照灯・尾灯など、バッテリーを通さずに交流のまま負荷につなぐ場合もあります(この場合は整流器を含めずにジェネレーターという)。オルタネーターを発明したのが、イタリアの電気工学者ガリレオ・フェラリスです。彼は交流電力システムのパイオニアとして知られており、当時もっとも優れた発明だと讃えられた発明を残しました。今回はそんなガリレオ・フェラリスの生涯を振り返っていきましょう。

ガリレオ・フェラリスの前半生(物理学を学んでオルタネーターを発明する)

ガリレオ・フェラリスは1847年、リヴォルノ・フェッラーリス(サルデーニャ王国)で生まれました。大学で工学の修士号を取得し、工業的な開発を行う研究所で技術物理学の助手として働きました。1885年に独立し、回転磁場を研究し始めます。この研究によって、自動車に搭載する発電機であるオルタネーターが生まれたのです。オルタネーターとは回転する電力を交流電力に変換する役割を持ち、自動車やオートバイの電気系統に与えるダメージを減らしながら電力を確保するという仕組みが生まれました。

オルタネーターの基本原理は、磁石を使うことで半永久的に電気を発生させる仕組みです。電機子となるコイルに永久磁石を近づけたり遠ざけたりすることで、電磁誘導が発生します。そうするとコイルに電流が発生し、ここで生まれた電流を交流として取り出します。多くの場合、永久磁石かコイルのどちらかを回転させ、片方は固定しますが、永久磁石とコイルの相対的な位置関係を直線的に往復させるものもあります。

オルタネーターのような発電機構の起源は、1831年にマイケル・ファラデーが発明した「ファラデーの円盤」です。銅製の円盤を磁石の両極の間で回転させて電力を得る仕組みですが、磁場を通る電流の経路が1つしかないため、生成する電位差が非常に低いという弱点がありました。やがてファラデーをはじめとした発明家たちはコイルに導線を複数回巻きつけることで電圧をあげられることを発見しますが、直流を作るためには整流子を発明する必要がありました。整流子を使って交流を生み出す発電機構は「ダイナモ」と呼ばれ、ここから現代のあらゆる発電機構に派生していきます。

それから50年あまりの年月をかけて、ダイナモは進化を繰り返していきました。より効率よく、そして負担の少ない発電機構を求めて、発明家たちは研究に没頭していったのです。交流の利便性が判明し、交流発電機が使われるようになると、「ダイナモ」という用語は直流の整流子発電機を表すようになり、交流の発電機はオルタネーターと呼ばれるようになりました。

ガリレオ・フェラリスの後半生(交流電力システムを実用化して水力発電(ダム)を可能にする)

1888年3月11日、トリノの王立科学アカデミーに論文で研究を発表しました。これらのオルタネーターは電力と電流の時間的なズレを意図的に発生させることで動作するという仕組みでした。この仕組みは画期的なアイデアであり、このときに発明された電源は広く受け入れられるようになります。多相オルタネーターの発明は、電気を用いた発明を飛躍的に進歩させるきっかけとなり、歴史的にも非常に重要な意味を持つ出来事として知られています。

また、これらの発明により、かなりの距離にわたり電力をワイヤによって経済的に伝送することも可能となりました。多相電力の発明によって遠隔地における水力発電(ダム)が可能になり、機械的な作業を行う必要のある山奥の工場にも電気を供給できるようになったのです。こうした電力システムは世界中に広がり、大陸中に電力を伝えるネットワークの爆発的な成長につながりました。

1889年、フェラリスはイタリア初の電気工学の学校で働き、1896年にはイタリア電気技術協会に加入し初代協会長に就任しました。

フェラリスは研究興味を電気に限定せず、屈折計器の基本的性質についても研究を行っていました。理論の基本表現と応用が主な研究内容で、中心のない系に対する幾何光学の詳細な記述も含まれていました。応用的な理論はあまり強調せず、より広い普遍性を提供していきました。

今回は、オルタネーターを発明したガリレオ・フェラリスの生涯を振り返りました。発電機構自体はフェラリス以前から発明されていたものの、整流子を使わない発電機構が生み出されたのは歴史に残る快挙ともいうべき功績です。自動車やオートバイが生まれ、その後の産業・文化の促進にも少なからず影響を与えています。何度も繰り返し実験を行い新たな発見をしていく、その姿勢は見習いたいものですね。

アーカイブ