ブログ

ED Texから別の裁判所への移送が認められた事件(In re Acer)

2010.12.06

伊藤 寛之

In re Acer: Transfer Out of the Eastern District of Texas
ED Texは、特許訴訟での特許権者側の勝率が非常に高いことが知られています。そのため、特許権者は、なんとかしてこの裁判所で訴訟をしようとします。
被疑侵害者側は、なんとかして別の裁判所に移送してもらうおうと頑張ります。
上記の記事は、移送が認められた最近のケースです。
移送が認められた理由は、証人の多くがNorthern District of California又はこの近くに住んでいるので、
この裁判所でやった方が負担が少ないだろうということです。
移送を認めるかどうかは、基本的に地裁の裁判官の裁量事項であり、地裁の裁判官の判断がその裁量の濫用(abuse of discretion)である場合に限って、地裁の裁判官の判断がひっくり返されます。abuse of discretionの基準は、非常に高い基準であり、一般には、この基準の判断が覆ることはまれであると言われています。
ED Texが特許権者に有利な理由についてアメリカの弁護士に聞いたところ、特許訴訟が多いとお金を持った弁護士が大量に街にくるので、ホテルや飲食業などが潤う。だから、あの街は、もっともっと特許訴訟を増やしたいと考えており、その街の住民から選ばれる陪審員はどうしても特許権者よりの判断をしがちなんだ、って言っていました。真偽は不明ですが。。。
移送の申立は、従来は認められていませんでしたが、以下の事件において、CAFCが移送を認める命令を出したことをきっかけに何件が移送の申立が認められたケースがあるようです。
Federal Circuit Transfers Case Out of Texas (Applying New Fifth Circuit Precedent)
In re TS Tech USA Corp. (Fed. Cir. 2008)

以下の記事では、移送の申し立てが認められたケースと認められなかったケースが紹介されています。
Genentech & Volkswagen: Federal Circuit Splits on Venue Transfer Cases

ところで、ED Texで一番影響力の裁判官は、Ward判示ですが、彼がもうすぐ引退するようです。
Judge Ward’s Retirement Highlights Need for Increased Judicial Pay

アーカイブ