ブログ

クレーム解釈が外部証拠に基づく場合は、外部証拠の認定については、clear error基準で地裁判決をreviewすべきとした米国最高裁判決(Teva事件)

2015.02.13

SKIP

2015年1月20日に新たな米国最高裁判決がでましたので解説します。
最高裁判決文へのリンク
以下のサイトに英語での解説があります。
Federal Circuit’s Overuse of “De Novo” Standard When Reviewing Trial Courts’ Patent Claim Construction Rulings Ends – Faruki Ireland and Cox PLL
この最高裁判決では、CAFCがクレーム解釈に関する地裁の判断内容をreviewする際に、クレーム解釈が外部証拠に基づく場合は、外部証拠の認定については、clear error基準で地裁判決をreviewすべきとした点が特徴です。
CAFCは、地裁判決の内容に問題があるかどうかをreviewするための控訴審ですが、地裁の判断の内容によっては、地裁での判断内容を尊重することが求められています。
具体的には、法律問題に関しては”de novo基準”で審理を行い、事実問題に関しては”clearly erroneous基準”で行われます。
あるイ号製品がクレームの範囲に含まれるかどうかは、クレームの用語をどのように解釈すべきかによって決まる場合がありますので、クレーム解釈は侵害訴訟において極めて重要な判断です。マークマン事件では、クレーム解釈は、地裁での解釈に明らかな誤りがない限り地裁の判断を尊重すべきか(clearly erroneous基準)、地裁の判断を無視して最初から審理することができるか(de novo基準)が争われマークマン事件最高裁判決では、クレーム解釈は法律問題であるので、CAFCは、地裁の判断を無視して最初から審理することができる(de novo基準)と判断されました。この判断のベースとなったのは、特許明細書及びクレームは、法律文書であり、クレームは、明細書の内容に基づいて判断されるのであるから、契約書の解釈と同様に法律問題であると判断したことです。
この判決以降、CAFCは、最高裁のお墨付きをもらいましたので、クレームの解釈が関係する事項に関しては、”de novo”と宣言して、地裁での審理内容を無視して、自らの考えに基づいて、新たにクレーム解釈を行なって来ました。
多くの事件では、このような基準で問題ないのですが、クレーム解釈には、明細書の内容だけではなく、辞書や専門家証言などを外部証拠として用いて行われる場合があり、その場合に、専門家の証言を直接聞いていないCAFCの裁判官が専門家証言の内容を無視して、クレーム解釈を行ってもいいの?という疑問が出てきました。
この疑問に対して、CAFCは、マークマン事件最高裁判決ではクレーム解釈は法律問題だといっているんだから、専門家証言があろうがなかろうがde novoで審理する、と判断しました。
このCAFCの判断に対して、最高裁が審理を行ったのが、今回の最高裁判決です。
この事件で問題となったのは、クレーム中の「分子量」という用語です。
被告は、「分子量」には、ピーク平均分子量、数平均分子量、重量平均分子量などがあり、「分子量」という用語は不明確であると判断しました。
これに対して、特許権者Tevaの専門家は、「明細書の図1のクロマトグラフを参照すると、当業者は、クレームの「分子量」がピーク平均分子量を意味していることが分かる。」と証言し、地裁は、この証言を信頼して、「分子量」は、明確であると判断しました。
控訴審では、CAFCは、「Tevaの専門家の証言の内容を参照しても、「分子量」の用語が明確になるとはいえない」と判断して、特許無効であると判断しました。CAFCは、地裁の審理内容を無視して、de novo基準で判断しました。
最高裁では、「クレーム解釈のベースとなる事実認定が存在している場合には、その事実認定部分については、de novo基準ではなく、clear error基準を採用すべきではないか?」が争われました。そして、最高裁は、「当業者が図1のデータをどのように解釈するか」は事実問題であり、clear error基準で判断すべきであると判断しました。さらに、最高裁は、「CAFCは、地裁のクレーム解釈のベースとなる事実認定に明らかな誤りがないと判断した後にのみ、地裁のクレーム解釈をde novo基準で審理すべきである。」と判断しました。

アーカイブ