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新規性喪失の例外適用を受ける際に気をつけること

2014.12.20

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平成23年改正で、新規性喪失の例外の適用範囲が拡張されました。
従来は、特定の学会での発表のみが適用範囲でしたが、改正後は、特許を受ける権利を有する者の行為に起因した全ての公開が適用対象になりました。
具体的に適用を受けるための方法は、以下のガイドラインに詳細に説明されています。
発明の新規性喪失の例外規定の適用を受けるための手続について | 経済産業省 特許庁
注意点は、以下の通り。
・願書には、「【特記事項】特許法第30条第2項の規定の適用を受けようとする特許出願」と記載する。改正前は、「第1項」だったので、古い書類を元にして願書を作成すると、間違える危険性があるので、十分に注意が必要。
・共願の場合は、特に注意が必要。全ての出願人から証明書を取得する必要がある。提出期限が出願日から30日しかないので、出願人毎に証明書を作成して、別々の書面に捺印してもらう方が効率がいい。
・証明書の作成前に、全ての発明者から出願人への譲渡日を確認する。この譲渡日と行為日との関係によって証明書の作成方法が変わる。
・全ての公開行為について証明書を作成する。
・公開の原因となる行為を特定して、その行為を行った時点での特許を受ける権利の保有者が誰であるのかをしっかりと把握した上で証明書を作成する。ここを曖昧にするとミスに繋がる。
例えば、学会発表の申し込みを行った後に、会社に権利譲渡を行い、その後、予稿集が出た後に、口頭発表を行った場合、「公開の原因となる行為」とはなんだろうか?
この場合、以下の2回の公開が行われている。
・出版社が予稿集を発行
 この発行行為自体に関しては、発明者は関与してない。しかし、この発行の原因となった行為は、学会発表の申し込みである。従って、学会発表の申し込みを行った時点での特許を受ける権利の保有者が重要であり、この場合は、発明者が保有者である。従って、30条の証明書は、予稿集の公開は、「特許を受ける権利を有する者(発明者)が行った学会発表の申し込みという行為に起因して、予稿集の発行が行われた」という理解で作成する。
・発表者が口頭発表
 単純化のために発表者=発明者とする。この公開の原因となった行為は、学会発表の申し込みと口頭発表自体である。学会発表の申し込みの時点では、発明者が特許を受ける権利の保有者であり、口頭発表の時点では会社が特許を受ける権利の保有者である。従って、30条の証明書は、口頭発表による公開は、「特許を受ける権利を有する者(発明者)が行った学会発表の申し込みという行為に起因して、しかも特許を受ける権利を有する者(会社)の依頼に起因して、口頭発表が行われた」という理解で作成する。この理解で作成すれば、2つの観点から、30条の対象になるので、より安全である。
権利譲渡のタイミングと公開の形態によって、30条の証明書は、非常に多くのパターンがあり、証明書の作成にミスが発生すると、新規性が喪失するという深刻な問題に繋がります。
そこで、弊所では、上記の色々なややこしい問題の存在を踏まえて、色々なパターンにおいて柔軟な対応が可能な雛形を用いて、安全に30条の証明書が作成できるように工夫しています。

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