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スーパー実施例を存在させる

2013.03.11

伊藤 寛之

実施例が10個ある場合に、その全ての評価結果が◎になっている明細書がたくさんあります。全ての実施例が極めて優れた効果を有することを示すことを意図していると思いますが、これは、別の観点では、実施例間では、評価結果に差異がないことを示しています。
このような実務は、確実に一発特許になるのであれば全く問題がないのですが、ある1つの実施例と同じものが先行技術に開示されていた場合にやっかいなことになります。特許にするには、その実施例を含まないように、請求項1を補正する必要がありますが、その場合、残された実施例が、先行技術と差異が無いことになり、効果を主張して権利化を図ることが困難になります。
このような困難な状況が生じないようにするには、例えばある比較例1,実施例1,実施例2の測定値がそれぞれ3と3.2と3.3である場合に、評価基準Aではなく評価基準Bを使用して、評価結果を見せるのがいいと思います。3.2と3.3は、技術的な観点から大きな差異であるとしても、評価基準Aを使うと審査官は同程度と判断します。しかし、評価基準Bは、両者に差異があるという事実をより印象的に審査官に伝えることができます。
そうすると、実施例1が先行技術に記載されていた場合でも、実施例2(スーパー実施例)に減縮し、その効果が先行技術よりも優れていることを主張して、権利化を測りやすくなります。
但し、この場合、実施例2が先行技術に開示されていると窮地に陥ります。その状況を防ぐために、山脈実施例にすることはできないかを検討します。この点については別の記事で解説します。
(評価基準A)
×:測定値が3以下
△:測定値が3超かつ3.1以下
○:測定値が3.1超かつ3.15以下
◎:測定値が3.15超
(評価基準B)
×:測定値が3以下
△:測定値が3超かつ3.1以下
○:測定値が3.1超かつ3.2以下
◎:測定値が3.2超

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