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平成23年法律改正ざっくり3 審決取消訴訟提起後の訂正審判の請求の禁止

2012.03.07

伊藤 寛之

特許法等の一部を改正する法律(平成23年6月8日法律第63号)
平成23年法律改正(平成23年法律第63号)解説書
第1章 通常実施権等の対抗制度の見直し
第2章 冒認出願等に係る救済措置の整備
第3章 審決取消訴訟提起後の訂正審判の請求の禁止
2  訂正審判は、特許無効審判が特許庁に係属した時からその審決(請求項ごとに請求がされた場合にあっては、その全ての審決)が確定するまでの間は、請求することができない。ただし、特許無効審判の審決に対する訴えの提起があつた日から起算して九十日の期間内(当該事件について第百八十一条第一項の規定による審決の取消しの判決又は同条第二項の規定による審決の取消しの決定があつた場合においては、その判決又は決定の確定後の期間を除く。)は、この限りでない。
(特許無効審判における特則)
第百六十四条の二審判長は、特許無効審判の事件が審決をするのに熟した場合において、審判の請求に理由があると認めるときその他の経済産業省令で定めるときは、審決の予告を当事者及び参加人にしなければならない。
2 審判長は、前項の審決の予告をするときは、被請求人に対し、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正を請求するための相当の期間を指定しなければならない。

 従来は、無効審判の審決が出た後であっても訴訟提起後の一定期間内には訂正審判を請求することができました。この規定は、平成15年改正で導入されましたが、それまでは訴訟の終結まで無制限に訂正審判請求ができましたので、それによる裁判所審理の無駄を削減するための改正でした。
 今回の改正は、裁判所審理の無駄をさらに削減するためのものであって、審決が出る前に訂正を行う機会を付与し、その代わりに審決後の訂正審判請求を一切認めなくするというものです。
つまり、
 審決後の無制限に訂正審判→キャッチボール現象発生→平成15年法改正で訂正審判が請求できる期限を設定
 →まだ、キャッチボール現象が残っている→今回の改正で、訂正請求の機会を拡張し、訂正審判を完全に禁止
というものであり、前回の法改正が中途半端であったので、それを改善するのが目的なのだと思います。
ところで、今回の改正のように、特許権者は、無効の主張に対して、訂正請求を行って、特許の瑕疵を修正して、特許を維持する制度がふんだんに容易されています。
これに対して、特許になる前の段階では、拒絶査定審判請求後は補正・分割出願の機会が一切与えられていません
いい発明を適切に保護するという観点からは、訂正請求の機会がふんだんに与えられるのはいいことだと思いますが、それは、特許になる前でも事情は同じだと思います。
現行の制度では、請求項2に特許性があっても、請求項1に拒絶理由があれば、特許を受けることができません。補正や分割出願を行って、請求項2について特許を受けることはできません。審判官が温情で補正の機会を与えてくれることはありますが、権利としては、補正や分割はできません。
可能であれば審査段階で決着をつければいいのですが、審査官にもバラツキがありますので、審査段階で決着を付けられない場合があります。実務上、非常に大きな問題だと思いますが、今回の改正では無視されてしまいました。
第4章 再審の訴え等における主張の制限
第5章 審決の確定の範囲等に係る規定の整備
第6章 無効審判の確定審決の第三者効の廃止
第7章 料金の見直し
第8章 特許料等の減免に係る関係法令の見直し
第9章 発明の新規性喪失の例外規定等の見直し
第10章 出願人・特許権者の救済手続の見直し
第11章 商標権消滅後一年間の他人の登録排除規定の廃止

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