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不競法2条1項14号の「他人」は、警告書に明示されている必要はないと判示した判決

2010.12.06

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◆平成17年(ワ)第3056号損害賠償等請求事件
★不競法2条1項14号の「他人」は、警告書に明示されている必要はないとされた。
1 「他人」の明示の要否
(1) 不正競争防止法2条1項14号の不正競業行為が成立するためには,当該
信用毀損行為を組成する文書等を受け取った者に特定の者の商品等を想起させる内
容が記載されていれば足り,当該文書等に「他人」の氏名又は名称が明示されている
必要はない。けだし,当該文書等に「他人」の氏名等が明示されていなくとも,当該
文書等を受け取った者に特定の者の商品,役務等について事実に反する受け止め方
を生じさせるのであれば,「他人」の営業上の信用に対する毀損が生じるおそれがあ
るからである。
★競合への警告についての法律論
特許権者が競業者の取引先に対する訴え提起の前提としてなす警告も,
特許権者が事実的,法律的根拠を欠くことを知りながら,又は特許権者として,特
許権侵害訴訟を提起するために通常必要とされる事実調査及び法律的検討をすれば,
事実的,法律的根拠を欠くことを容易に知り得たといえるのに,あえて警告をした
場合には,競業者の営業上の信用を害する虚偽事実の告知又は流布として違法とな
ると解すべきである。しかし,そうでない場合には,このような警告行為は特許権
者による特許権の正当な権利行使の一環としてされたものというべきであり,正当
行為として違法性を阻却されるものと解すべきである。
★具体的事実を検討して、違法性が阻却された。
(3) 違法性阻却の成否について
ア前記(2)アないしカの事実に,前提事実(3),(4),(6)及び(7)を併せ考慮
すると,本件特許権者であった被告甲及びその専用実施権者であった被告会社が,
カルフールに対して本件各警告書を送付するに当たり,本件特許権が無効であるこ
とを知っていたと認めることはできない。
イ(ア) また,一般に,特許の進歩性に関する判断は,微妙な判断を要するこ
とが少なくない。本件においても,本件特許権は,別件侵害訴訟及び審決取消訴訟
において,進歩性欠如を理由に無効とされたとはいえ,いずれも原告及び被告らの
主張を踏まえた慎重な判断の結果であり,丸田屋発明の存在を踏まえても,明らか
な無効理由が存在したとまではいえない。
この事実と上記アに掲げた諸事情を併せ考慮すれば,被告らが,カルフールに対
して本件各警告書を送付するに当たり,特許権侵害訴訟を提起するために通常必要
とされる事実調査及び法律的検討をすれば,本件特許権が無効であることを容易に
知り得たのに,あえて警告をしたものと認めることもできない。

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