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【SKIPの知財教室(IP Hack ®)】じっくり®ヒストリー 「グラフェン」の発明家 コンスタンチン・ノボセロフとアンドレ・ガイム(鉛筆とセロハンテープの実験でノーベル物理学賞を受賞した天才研究者コンビ)

2023.07.17

AKI

私たちの身の回りには非常に多くの画期的なモノや手法であふれています。これらはすべて先人たちのアイデアによって実用化された数多くの発明のおかげです。半導体や電子機器などの素材は、時代を追うごとに様々な素材が登場し、進化し続けています。2010年に発見された「グラフェン」という物質は、ダイヤモンドよりも硬い物質として発見され、数多くの製品開発に利用されています。このグラフェンを研究した人物が、コンスタンチン・ノボセロフとアンドレ・ガイムの2人です。彼らは同じ大学で学び、やがてこの研究によってノーベル物理学賞を受賞しました。ノボセロフは歴代最年少の受賞を塗り替える快挙であり、その名前を全世界に知らしめました。今回はこのコンスタンチン・ノボセロフとアンドレ・ガイムの生涯を振り返っていきましょう。

コンスタンチン・ノボセロフとアンドレ・ガイムの前半生(大学院で二人が出会う)

コンスタンチン・ノボセロフは、1937年生まれのロシア人物理学者です。ニギニ・タギルでロシア人の家庭に生まれたノボセロフは、モスクワ物理工科大学に通って物理を学びました。大学を卒業すると、今度はオランダのナイメーヘン大学でPhDの研究を行いました。

アンドレ・ガイムは、ロシアで1958年にロシアで生まれました。オランダ人ながら、ソビエト連邦で育ち、勉学の道を歩みました。成人した後はその学力を活かし、様々な大学のポストに就くようになります。2000年には「カエルの磁気浮上」というテーマでイグノーベル賞を受賞しました。これによって、世界初のノーベル・イグノーベル賞の両方を受賞した人物として一躍有名人になりました。

二人の出会いは、ナイメーヘン大学でのことです。当時ガイムは助教授、ノボセロフは院生であり、研究を通して知り合いました。2001年に二人はマンチェスター大学に移動し、独自の研究を行うことになります。

コンスタンチン・ノボセロフとアンドレ・ガイムの後半生(グラフェンを発見する)

彼らが残したもっとも大きな発見は、新物質であるグラフェンの発見です。グラフェンは、ダイヤモンド以上に炭素同士の結合が強く、平面内ではダイヤモンドより強い物質と考えられています。物理的にもとても強く、世界で最も引っ張りに強いことも特徴です。熱伝導も世界で最も良いとされ、電気の伝導度もトップクラスに良い物質です。

完全なグラフェンは六角形セルの集合のみからなり、五角形や七角形のセルは格子欠陥となります。五角形のセルが孤立して存在するときには、平面はコーン状にとがってしまいますが、同じように七角形のセルが孤立したものはシートをサドル型に湾曲させます。五角形や七角形セルの導入を制御することで、カーボンナノバッドのような様々な形状を生み出すことも可能。さらに、1層からなるカーボンナノチューブは筒型のグラフェンとみることができます。

このグラフェンをどうやって見つけたかというと、次のような方法を取りました。まず、鉛筆の主成分である黒鉛をセロハンテープの上に載せます。そして、セロハンテープをくっつけて剥がすという作業を繰り返し行います。何度もセロハンテープを貼ったり剥がしたりしていくうちに、セロハンテープを貼ったシリコン基板には薄い膜ができるようになります。この薄い膜こそがグラフェンの正体です。

グラフェンの登場は、物理学の世界に大きな衝撃を与えました。この世に存在するもっとも薄い物質でありながら、その強度はダイヤモンドを上回ります。この性質から、あらゆる製品の開発に利用できる素材として大きな注目を浴びるようになります。電池やコンデンサ、タッチパネルなど、様々な製品にグラフェンが使用されています。

科学の発展に貢献する物質を発見したのもさることながら、鉛筆とセロハンテープだけで新物質を発見した慧眼を称え、二人はノーベル物理学賞を受賞しました。ガイムは2007年、ノボセロフは2011年にそれぞれ王立協会フェローに選出され、科学者として多大な名誉を獲得しました。ガイムは2010年に、ナイメーヘン大学から改名したラドバウド大学に革新的材料とナノ科学の教授に指名され、ますます研究を続けるようになります。ノボセロフはロシアとイギリス両方の市民権を獲得し、研究者人生を送っています。

今回は、ノーベル物理学賞を受賞した人物であるコンスタンチン・ノボセロフとアンドレ・ガイムの生涯を振り返りました。ノーベル賞の受賞理由は、誰も思いつかなかった画期的な方法で新物質を発見し、物理学の発展に貢献したことです。彼らが見つけ出したグラフェンという物質は、現代でも多くの製品製造に利用されています。そんなすごい人たちが、現代に生きていると思うと、誇らしいような気持ちになります。今ある便利な生活の裏には、彼らのような賢人が努力してきた跡がある、ということは忘れないようにしたいですね。今後もグラフェンの研究や、より便利になる生活に期待していきましょう。

 

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