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【SKIPの知財教室(IP Hack ®)】じっくり®ヒストリー スヴェア・ストーブの発明家 カール・ニーベリ(人気のあるキャンプ用ストーブの「スヴェア」ストーブの発明家)

2024.05.27

AKI

私たちの身の回りには非常に多くの画期的なモノや手法であふれています。これらはすべて先人たちのアイデアによって実用化された数多くの発明のおかげです。フルガンは、ライト兄弟以前に発明された飛行機のひとつです。1890年代後半、蒸気機関を動力として数々の飛行機が作られました。当時はガソリンエンジンのように効率的にエネルギーを生み出す機構が存在しなかったため、長距離の飛行は不可能でした。とはいえ、飛行のメカニズムや機体の設計など、その後の航空産業に影響を与えたことは間違いありません。先人たちの積み重ねが、ライト兄弟の有人飛行につながったといってもよいでしょう。このフルガンを設計・製作した人物がスウェーデンの発明家・実業家だったカール・ニーベリです。航空産業のパイオニアのひとりとして知られるニーベリは、蒸気エンジンや航空機、スクリューの開発にも関わりました。今回はそんな、カール・ニーベリの生涯を振り返っていきましょう。

 

カール・ニーベリの前半生(ブロートーチを発明してアルファ社を設立し、調理器の発明で成功する)

カール・ニーベリは1858年、ヴェストマンランド県のアルボーガで生まれました。後にスンドヴィベリで最大の産業のひとつとなるマックス・ジーヴェルト読書灯工場を設立します。学業を終えるとニーベリは宝飾職人として働き始め、後にストックホルムに移ると様々な金属加工業に携わりました。その後は「J・E・エリクソン機械工場」)に就職しました。

工場で働いている間に、ニーベリはブロートーチを発明しました。安全性が高く、直接加熱できるブロートーチの出現は産業の効率化に一役買いました。1882年、ニーベリは機械工場をやめてブロートーチの製造・販売で生きていこうとしました。ストックホルムのルントマーカルガタンに工房を設立して商売を行いましたが、製造と販売を両立させるための時間的な問題を解決できず、売上は苦しい状態が続きました。ブロートーチの売れ行きが曇っている間、ニーベリは「痛風に効く」という謳い文句の指輪を販売し、なんとか凌ぎました。1884年、工房をスンドヴィベリに移し状況を一新。1886年に物産展で出会ったマックス・ジーヴェルトの目にブロートーチが止まり、支援してくれることになりました。強大なパトロンを獲得したニーベリは、アルファ社を設立し、電線の製造事業にも乗り出しました。

アルファ社が動き出してから程なく、競合に当たるプリムス社がブロートーチの製造を始めると、ニーベリはパラフィン・オイル/ケロシン調理器の製造に動き出しました。最初の型は「ヴィクトリア」と呼ばれ、こちらはあまり売れませんでした。しかしこの次に開発された「スヴェア」ストーブはよく売れ、やがて多数の商品をロシアに販売するようになります。「スヴェア」ストーブの製造はヒットし、週に3,000個を製造するほどにまで成長していきました。1906年、会社は株式会社として改組されます。ニーベリは自社の従業員に対しては非常に気前がよく、しばしば会社の株を従業員へ分配しました。この従業員は会社を辞めるときに他で働く従業員よりも一般的に良い条件が与えられたので「ニーベリ成金」として知られました。1922年に会社はマックス・ジーヴェルトに売却され、ジーヴェルトは1962年にエッソに買収されるまでこの会社を所有し続けました。

 

カール・ニーベリの後半生(蒸気エンジン、航空機、スクリューなどの発明を行う)

ニーベリは蒸気エンジン、航空機、スクリューといった様々な機械に関する多くの発明に携わりました。最も著名なのは航空先駆者としての業績であり、「空飛ぶニーベリ」の発明で知られています。1897年から1910年頃まで、リーディンゲにある自宅の外でフルガンを製作し、庭にある環状の木製トラックと冬は氷の上でテストを行ないました。しかし、当時は小型の効率的なガソリンエンジンがなかったため、幾度かの短いジャンプ飛行を行なうのが限界でした。

ニーベリは翼型の開発で、スウェーデン王立工科大学のJ・E・セーデルブロム教授の助けを得て精力的に開発を行ったが、フルガンを飛ばすことは叶いませんでした。

スヴェアのようなキャンプ用ポータブルストーブは、その手軽さから急激に普及していきました。1950年〜1960年にかけてバックパッキングが流行していたことや、1970年〜1980年にかけてのリーヴ・ノー・トレース文化の勃興がその大きな影響とされています。キャンプではまた、キャンプ地では燃料の枯渇や焚き火の代替手段として、ポータブルストーブの必要性に拍車をかけました。しかしより小型で、さまざまな種類の燃料が使用できる構造のストーブが発明されると、スヴェアの人気は追い落とされることとなります。しかしスヴェアの大きな特徴でもある「耐爆仕様」と称される頑強さは、長年の愛好家からいまだに高い人気を保っています。

今回は飛行機の発明とキャンプ用ポータブルストーブである「スヴェア」を発明したカール・ニーベリの生涯を振り返りました。さまざまな産業に乗り出す彼の熱意は、常人に真似できるものではありません。キャンプ地で有効に活用できる小型のストーブが発明されたことによって、未開の地へ到達する可能性が広がったことは大きな功績ではないでしょうか。私たちの身近にあるモノにも、その裏側に歴史があることを知るとより生活が面白くなるかもしれないですね。

 

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