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【SKIPの知財教室(IP Hack ®)】じっくり®ヒストリー 4ストロークエンジンの発明家 ニコラウス・オットー(4ストロークの内燃機関である「オットー・サイクル」に名を残す天才発明家)

2023.12.28

AKI

私たちの身の回りには非常に多くの画期的なモノや手法であふれています。これらはすべて先人たちのアイデアによって実用化された数多くの発明のおかげです。蒸気機関を使ってエネルギーを生み出す方法は、古くから研究されあらゆる産業で利用されてきました。技術の進化に伴い、エネルギーを生み出す様々な方法が見つけられるようになります。その中で、ピストン運動を使って燃料をエネルギーに変える方法も生み出されました。この内燃機関を見つけ、発明した人物がドイツの発明家であるニコラウス・オットーです。彼が発明した内燃機関は4ストロークからなる概念であり、これは「オットーサイクル」として現代に伝えられています。今回はそんなニコラウス・オットーの生涯を振り返っていきましょう。

ニコラウス・オットーの前半生(小学校を中退してエンジンの研究を始め、4サイクルエンジンの開発に成功する)

ニコラウス・オットーは、1832年にナッサウ公国の小都市ホルツハウゼンで生まれました。生まれ育った地で初等教育を受けたオットーでしたが、生活費を稼ぐために学校をやめ、食料品店で働き始めました。後にケルンに転居すると、そこでエティエンヌ・ルノワールの石炭ガス燃焼機関を目にします。これをきっかけに燃焼機関に興味を持ったオットーは自身でも燃焼機関の実験を始めました。

オットーが初めて内燃機関の試作を行ったのは、1861年のことです。ケルンで見たルノワールの燃焼機関、その設計をもとにした機関であり、実験は成功に終わりました。1864年にはオイゲン・ランゲンとともにN.Aオットーという内燃機関製造業者を立ち上げました。この会社は現在でも活躍しており、140年にわたる歴史を持つ世界最古の老舗企業となっています。

1867年、N.Aオットーは2サイクルの内燃機関を生産し始めました。創業期にあたるこの会社では、「大気機体出力機械」で成果を残し、広く注目されるようになります。技術的にも大きく躍進し、新たな挑戦として行ったのがこの内燃機関の生産です。2サイクルの内燃機関は画期的な発明であり、パリ万国博覧会に出展されると、小規模企業ながら経済的な推進を行う装置を発明したとして金賞を受賞しました。この内燃機関は1868年に本格的な生産体制が築かれ、1872年にはゴットリープ・ダイムラーとヴィルヘルム・マイバッハが加わって4サイクルの内燃機関の開発に成功しました。この4サイクルの内燃機関は「オットー・サイクル」と呼ばれるようになり、1876年には仕組みを言語化したものが文書として公開されました。1877年に特許を取得し、1882年にはヴュルツブルク大学の哲学部から名誉博士号を授与されました

ニコラウス・オットーの後半生(異議申し立てにより、特許が取消される)

1884年、オットーはさらなる躍進を求めて、内燃機関の設計を革新しました。それまでの内燃機関は石炭ガスを燃料に利用していたため、使える場所を固定しなければならないという問題がありました。加えて、ガスを点火するには種火が必要だったため、他の道具を使って着火する必要がありました。

オットーはこれらの問題点を改善するために、低圧電磁点火装置を発明します。また、液体燃料を利用することで点火を簡単にし、さらに移動する物体にも乗せられるように改善を行いました。利便性の上がった内燃機関はニーズを満たすことに役立ち、より一層高い人気を獲得していきました。

経営も順調にいき、オットーの生活は安泰かと思われましたが、それが揺らぐ事態が発生したのは1886年のこと。オットー社は競合他社によって、特許の取得について異議申立をされてしまったのです。曰く、オットーが内燃機関を発明するより先に、フランスの技師アルフォンス=ウジェーヌ・ボー・ド・ロシャスが4ストロークの内燃機関を提案していた、というものでした。この異議申立の結果、オットーの特許は取消しとされ、権利収入を失うことになります。しかし特許が失効となったとき、すでにオットーの内燃機関はあらゆる産業で利用され、多くの人々のもとに普及していました。そして、近代の産業革命の時代を飛び越え、今日でも自動車やオートバイ、モーターボートなどに利用されています。

1981年、オットーはその生涯を終えました。

今回は、4ストロークの内燃機関である「オットー・サイクル」に名を残すニコラウス・オットーの生涯を振り返りました。技術的にもまだ未熟だった時代にエネルギーを生み出す機関を発明し、それが今でも様々な産業で利用されていることには驚きを隠せません。現代のあらゆるアイテムには、それぞれに歴史があります。先人たちが築き上げたこれらの歴史を忘れないようにしたいものです。

 

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