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【SKIPの知財教室(IP Hack ®)】じっくり®ヒストリー 真空ポンプと気圧計と静電発電機の発明家 オットー・フォン・ゲーリケ(マクデブルクの市長をしながら真空に関して数々の実験を行ったマルチな才能のある優秀な発明家)

2023.11.20

AKI

私たちの身の回りには非常に多くの画期的なモノや手法であふれています。これらはすべて先人たちのアイデアによって実用化された数多くの発明のおかげです。真空の性質は現代でも常識となっていますが、その解明には長い時間がかかりました。数学者アリストテレスは「自然は真空を嫌う」という言葉を残しており、酸素がない状態は不可解なものとして扱われていました。その現象に興味を持ち、真空の研究で成果を出したのがドイツのオットー・フォン・ゲーリケです。真空に関して数々の実験を行い、その性質を明らかにしたことで人類の科学を大きく進歩させた功績で知られています。今回はそんな、オットー・フォン・ゲーリケの生涯を振り返っていきましょう。

オットー・フォン・ゲーリケの前半生(マクデブルクの市長をしながら真空ポンプを発明する)

オットー・フォン・ゲーリケは、ドイツのマクデブルクの貴族の家に生まれました。勉学に励んでおり、大学に通って法学と工学を学びました。勉強熱心で、さらに学びを深めるためにイギリスやフランス、オランダといったヨーロッパ各地に留学し、様々な知識を身につけていきました。大学卒業後はエルフルトで工学技師として働いたあと、1627年にマクデブルクに戻って市会議員となりました。

1631年、ドイツを中心としてヨーロッパ各地を巻き込む宗教戦争が勃発。これは30年戦争と呼ばれるようになり、ゲーリケの故郷マクデブルクは壊滅的な被害を受けました。戦時下においては避難していたゲーリケは、終戦後に無事に戻ることができました。マクデブルクの市長として都市の復興に尽力し、街の立て直しに貢献しました。

ゲーリケの業績として知られているのは、主に大気圧に関する研究と静電気に関する研究です。1650年に行った実験では、シリンダーとピストンを用いて任意の容器の中から空気を抜くポンプを製作し、真空の特性を調査しました。この実験で、真空状態では音が聞こえないことや燃焼が発生しないこと、食物が酸化しないことなどを発見しました。

気圧については、銅でできた半球状の容器を2つ組み合わせる実験を行いました。真空状態における気圧はかなり強くなるので、容器同士の密着が強化されるという内容です。内部の空気をポンプで抜くと、2つの半球は簡単に離れなくなることを証明しました。人間の力では到底2つの半球を分離させることは不可能であり、相当な力を使わないと離れさせることができないというのが当時の新発見でした。1663年には左右8頭の馬に引っ張らせてようやく半球同士を引き剥がすことに成功しました。この実験はベルリンのブランデンブルク選帝侯フリードリヒ・ヴィルヘルムの目の前で行われ、ゲーリケは高い地位を獲得しました。

オットー・フォン・ゲーリケの後半生(気圧計と静電発電機を発明する)

ゲーリケはまた、気象学の先駆けとなる実験を行いました。それは気圧計を用いた科学的な天気予想です。根拠に基づいた予想方法が確立されるまでは、雲の位置や形、風向きやその日の気温、動物たちの行動などから予想を立てていました。現代でも言い伝えとして利用されることの多い方法ではありますが、信頼性があるとは言い難いものも含まれていました。

そこでゲーリケは、空気を入れた状態での容器と空気を抜いた状態での容器の重さを比べることを試みました。2つの容器を天秤にかけて置いておくと、その日によって天秤の傾きは異なりました。これによって大気圧に変動があることに気づき、のちに気象学という学問が確立されるきっかけとなりました。

晩年は静電気の研究にいそしみ、世界初の静電発電機を発明したことでも知られています。しかし現存する成果は歴史の中で失われてしまったため、目で見ることはできません。真空や気圧、電気など今でこそ原理や性質が明らかにされている現象を実験を使って見つけ出したことで、その後の人類はより便利な生活を送れるようになりました。

今回は、ドイツの学者だったオットー・フォン・ゲーリケの生涯を振り返りました。学者として高い知識と優秀な頭脳を持ち合わせていたゲーリケは、30年戦争に巻き込まれないように故郷のマクデブルクを離れました。戦争が終わって帰郷してからは市長となり、復興のために奔走しました。当時マクデブルクに住んでいた人々の多くは、ゲーリケに多大な感謝を抱いたことでしょう。さらに真空や気圧、電気などの画期的な発明を行い、科学の面でも人類の進化に貢献してきました。彼のような偉大な先人たちのおかげで、今の私たちの豊かな生活があることは心に刻んでおきたいものです。

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