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【SKIPの知財教室(IP Hack ®)】じっくり®ヒストリー 人類初の自動車を開発した発明家 ニコラ=ジョゼフ・キュニョー(蒸気機関で動く自動車を開発して「世界初の自動車事故」も起こした軍事研究者)

2023.09.04

AKI

私たちの身の回りには非常に多くの画期的なモノや手法であふれています。これらはすべて先人たちのアイデアによって実用化された数多くの発明のおかげです。日常生活の中で、自動車を見ない日はありません。当たり前の風景として浸透した自動車に対して、「その起源はどのようなものなのか?」と考える人は少ないのではないでしょうか。自動車の発明も、偉大な先人の知恵によって生み出された画期的なアイデアです。馬車が主流だった中世に比べると、現代はとてつもなく便利な生活になりました。私たちが不自由なく生活できているのは、それを開発した人のおかげです。人類初の自動車を開発した人物が、フランスの軍事技術者だったニコラ=ジョゼフ・キュニョーです。彼は蒸気機関を利用して、世界最初の自動車を開発しました。今回はそんな、ニコラ=ジョゼフ・キュニョーの生涯を振り返っていきましょう。

ニコラ=ジョゼフ・キュニョーの前半生(ロレーヌ公国で軍事技術者として活躍)

ニコラ=ジョゼフ・キュニョーは、1725年、ロレーヌ公国で生まれました。農家で育ったキュニョーは、技術に対しても高い素養を持っていました。大人になると、オーストリア軍に入隊し、軍事技術者として活躍するようになります。

ロレーヌ公国では、ロレーヌ公フランツ3世シュテファンが神聖ローマ皇帝フランツ1世となり、同時期にキュニョーは軍隊入りを果たします。当時のフランス軍はオーストリアに軍隊を貸しており、砲兵隊の指揮官であるジャン=バティスト・ヴァケット・ド・グリボーバルの推薦を受けた形です。これをきっかけにキュニョーの名は後世に残ることになります。このころ、大砲の運搬は軍人ではなく民間の技術者が行っていました。このやり方を改善する方法として、後に紹介する自走式の車を開発したことが、キュニョーの大きな功績です。

1756年、イギリスとフランスの間に大きな戦争が勃発します。この戦いは「七年戦争」と呼ばれ、18世紀における最大の世界大戦として知られています。結果はイギリス・プロイセンの勝利に終わり、フランスは多くの財産や土地を失いました。戦後、フランスは失地回復のために軍事力の増強に取り組み、当時の最新技術である蒸気動力の活用に乗り出しました。馬車が主流であった大砲の運搬を、自動車に運んでもらうことでコストを削減しようとしたものです。

そこで白羽の矢が立ったのが、キュニョーその人です。高い技術力で評価を得ていたキュニョーは、フランス軍の依頼を受けて自動車の発明に取り組みました。七年戦争は1763年に集結し、キュニョーは軍隊を退きました。しかし、技術者・開発者として、フランス軍とは関係を持ち続けたことで大きな開発を達成したともいえます。

ニコラ=ジョゼフ・キュニョーの後半生(蒸気機関で動く自動車を開発)

1769年から、キュニョーは大砲運搬のための自走式積載車の製作に取り掛かりました。蒸気機関の活用は個人的な開発場面でも取り入れていましたが、このプロジェクトはフランスの国家プロジェクトとして、政府から正式に依頼されたものです。キュニョーは1769年に1台目の試作車を、1770年にはより重い物を運べる仕様のものを作り上げました。最初に発明した試作車は、世界初の自動車として知られているものです。摩擦によって推進力を獲得し、人間が操縦できる仕組みの自動車です。2号車も自走はできたものの、転回操作が追い付かずにレンガの壁に激突しました。このエピソードは「世界初の自動車事故」として有名になっています。

しかし、プロジェクトは半ばにして、依頼元であるショワズールが失脚。後任の戦争大臣はプロジェクトを放置し、自然消滅という形となってしまいました。

晩年、キュニョーは軍事研究を続けていましたが、フランス革命から逃れるためにブリュッセルへ避難。恩給を受け取れなくなり、経済状況は逼迫します。1800年にはパリに戻り、商事裁判官として生計を立てられるようになります。それから4年後、パリでキュニョーはこの世を去りました。後継者はいませんでしたが、キュニョーの功績は後に大きく称えられることになります。彼が発明した砲車はパリ工芸博物館に展示され、現代でもその姿を見ることができます。キュニョーの生まれ故郷のヴォアには像が建てられていましたが、第二次世界大戦時にドイツ軍によって破壊されてしまいます。下部の銅板だけが残ったことが幸いして、1969年に復元されました。キュニョーの生家は現在では郵便局となっていて、石碑が建立されています。

今回は世界初の自動車を発明したニコラ=ジョゼフ・キュニョーの生涯を振り返りました。18世紀のフランスは七年戦争やフランス革命など激動の時代にあり、その渦中を生き抜き後世に残る発明をしたキュニョーの功績はまさに称えられるべくして、という表現がふさわしいでしょう。この発明をきっかけに、今の便利な暮らしがあると考えると、感慨深いものがあります。日常生活に欠かせないものの起源に対して興味を持つことは少ないかもしれませんが、たまに視点を変えて歴史を辿ってみると、面白い発見に出会えるかもしれませんね。

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