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【欧州】 統一特許vs従来特許、どちらを選択すべきか?

知財戦略 方式 特許 欧州

2023.01.26

Y. K.

来る2023年6月1日、欧州統一特許裁判所協定が発効となり、この日から欧州統一特許制度、および統一特許裁判所の運用が開始される予定です。

今後、統一特許または従来特許どちらで権利取得するか、非常に悩ましい問題だと思います。

審査手続きは共通で従来通り変更はなく、登録手続きの段階でいずれかを選択することになりますが、ひとつの参考として、コスト面から比較してみたいと思います。

【パターン1】イギリス・ドイツ・フランスの3ヵ国のみで権利取得したい場合

おそらく最も一般的なパターンだと思いますが、「イギリスは統一特許でカバーできない」というのが最大のネックです。以下2通りの方法が考えられます。

① 従来特許を選択し、イギリス・ドイツ・フランスそれぞれでバリデーション手続を行う
② 統一特許を選択し、さらにイギリスで個別にバリデーション手続を行う

登録段階での②の統一特許分の費用は、①のドイツ・フランス2か国分の費用よりはるかに大きく、登録後の毎年の年金も、年ごとに金額の差がどんどん大きくなっていきます。
そのため、このパターンでは、統一特許を選ぶメリットは「ない」と言えます。

【パターン2】計25か国で権利取得したい場合

すべての欧州の国が統一特許制度を批准しているわけではないので、「統一特許制度を選びたいけど、重要なアノ国が入ってない・・・」というケースも考えられます。
権利取得したい国の数が増えるほど、統一特許を選んでも結局、他にもあちこち各国毎にバリデーションしないといけません。
いきなり極端な例に飛んでしまうのですが、計25か国(統一特許批准国15カ国、非批准国10カ国)で権利取得を目指す場合、弊所でとった見積は以下の通りとなりました。(庁費用、代理人手数料、翻訳料、弊所費用すべて含む)

① 従来特許で25か国すべて各国毎にバリデーション手続を行う場合
登録段階でかかる費用:約524万円
権利満了までの年金総額:約4,123万円

② 統一特許を選択し、15カ国を統一特許でカバー、残りの10カ国で国毎にバリデーション手続を行う場合
登録段階でかかる費用:約256万円
権利満了までの年金総額:約2,093万円

このように、統一特許を選択すると、費用は約半分になります。
案件による翻訳料の差、代理人による手数料の差、為替レートによって金額は大きく変動しますが、多くの国で権利取得する場合の統一特許のメリットが明確になるかと思います。

余談ですが、「統一特許だと、やっぱりセントラルアタックが怖い・・・」という場合のひとつの対策として、
「分割出願をして権利範囲を分散させ、親出願と子出願の、一方を統一特許、もう一方を従来特許で権利取得する」というリスク分散の方法も考えられます。
(この場合、分割出願の権利化と管理に別途コストがかかるため、現実的ではないかもしれませんが・・・)

統一特許を選ぶか否かに関しては、コスト面だけでなく様々な要素が絡み合う難しい判断になると思います。
また新たな情報や事例が出ましたら、こちらで発信していきます!

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