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【SKIPの知財教室(IP Hack)】新規性とは? うっかり発表しちゃうと権利が取れなくなります。

2021.10.28

SKIP

特許法の目的は「発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もって産業の発達に寄与すること」(特許法第1条)と定義されています。かみ砕いて言えば、発明者に対して一定期間の独占権の付与を行う代わりに、発明品・発明された方法を第三者が利用することを認めるという法律上の決まりです。ではもしも、既に発明されているものとほぼ同じもの、もしくは少しだけ手を加えたものを特許申請するとどうなるのでしょうか。もし同等レベルのモノを特許申請できるなら、なんら科学技術の発展に貢献しない発明に独占権を与えることになって、産業界の秩序が混乱することになります。そのような事態を防ぐために、特許法には「新規性」および「進歩性」という考え方があります。今回はそのうち特許法における新規性について詳しく説明していきます。

特許を受けることが出来る発明の条件
発明の保護、および発明を奨励して産業の発展に寄与するための手段として、特許法の申請があります。基本的に発明が完成した段階で発明者は特許法の申請を行います。しかし、発明の内容がどんなものでも特許が取れるということはもちろんありません。ここでは、特許を受けられる発明の条件を6つ簡単にご紹介します。
まず特許を受けるための条件1つ目は「産業上利用することができるかどうか(特許法第29条第1項柱書)」です。特許を受けられる発明は産業上利用できる(工業・鉱業・農業・サービス業・運送業など)ことが前提となります。つまり、残念ですが学術的・実験的のみの利用となるものについて特許取得は難しいでしょう。また、日本では医療は産業ではないと考えられているので、医師などによる診断方法・治療方法・手術方法などの発明も特許取得は難しいのが現状です。あくまでも特許法の目的は「産業の発達に寄与する」でした。そのため、保護すべき発明とはみなされないということになります。
続いて2つ目は「新しいものであるかどうか=新規性=(特許法第29条第1項)」です。特許を受けることが出来る発明は、これまでの既存の発明にはない、「新しいもの」であることが重要な要素になります。この新しいもののことを特許法の専門用語で「新規性」といいます。既存のものを発明として申請しても、新規性を満たさないため決して特許を受けることはできません。
続いて3つ目に「容易に思いつくものではないかどうか=進歩性=(特許法第29条第2項)」です。既に発明されているものを少々改良したもののように、誰でも考えれば思いつくようなアイデアは特許取得対象とはなりません。簡単に思いつかないようなアイデアのことを「進歩性がある」といいます。科学技術の進歩に貢献しているといえるレベルでなくては、法上の発明として認めてもらえないということです。
続いて4つ目に「先に出願されていないかどうか(特許法第39条及び特許法第29条の2)」です。別の発明者が同じものを同時期に発明した場合、どちらに特許が付与されるのでしょうか。このような場合、日本では先に特許庁に出願した者に特許を与えるという決まりになっています。これを専門用語で「先願主義」といいます。つまり、先に出願されてしまうといけませんので、発明はすぐに出願するようにしましょう。
続いて5つ目に「公序良俗等を害していないか(特許法第32条)」です。ここまでで特許取得の必要条件をご紹介してきましたが、公序良俗を害すると判断された場合には特許を取得できません。例えば、「遺伝子操作をして生まれたヒト」の発明は、倫理的に問題があるため、上の4つを満たしていても当然特許は得られません。
最後6つ目に「明細書等の記載がきちんとしているか(特許法第36条)」です。発明の特許申請にあたっては、「明細書、特許請求の範囲及び必要な図面」(以下、明細書等)の作成が求められます。明細書等は、発明の技術的内容を公開するための技術文献及び特許発明の技術的範囲を定める権利書としての使命を持っています。つまり、この明細書等が不正確な記述であったり、規定通りに記述されていなかったりすると、発明内容を適切に理解できません。そのため明細書等の記載がきちんとしていない場合には特許取得はできません。

特許法の新規性とは
ここまでで特許を受けられる発明の条件を解説してきました。ここではその中の2つ目「新規性」について焦点を当てて詳しく解説していきます。
まず、特許を受けられる発明の条件の1つとして、これまでにない新しいものかどうかという評価基準がありました。これが特許法上の「新規性」です。なぜ新規性が特許取得の条件にあるかはなんとなくお分かりかと思いますが、新規性がなかったらどうなるのでしょうか。周知のモノに対して新たに特許権を与えることによって、2人目以降の発明者に対して無駄に独占権を付与してしまうことになります。また、新規性を満たさない発明は、決して産業の発達に寄与するものではなく、特許法の目的達成になりません。以上のような経緯があり、新規性が特許の付与において条件となっています。
では、ここで具体的に新規性を満たしていない事例を3つご紹介します。
まず1つ目は「特許出願前に日本国内外で公然と知られた発明」です。こちらは、出願前にどこかの講演や学会で発表されていたという場合です。
続いて2つ目は「特許出願前に日本国内外において公然と実施された発明」です。こちらは、特許の出願前に実は店で販売されていた場合や、製造工程において不特定者が見学できる状態にあった場合になります。
最後3つ目に「特許出願前に日本国内外において、頒布された刊行物に記載された発明や電気通信回線を通じて公衆に利用可能になった発明」です。具体的には、卒業論文や書籍、CD-ROMなどに既に掲載されている場合、インターネット上に公開されている場合です。
以上のような場合には新規性を満たしていないと判断され、特許を取得することはできません。では、いったいいつを基準にして「新規性」を判断しているのでしょうか。新規性があるかどうかの判断基準となる瞬間は、出願の時刻です。午前中に出願してその日の午後にその発明に関する講演が行われた場合はセーフです。しかし、午前中に講演が行われてその日の午後に出願をすれば、新規性は認められません。
また、先述の例に「公知」という単語が出てきましたが、どこからが公然として知られていることになるのでしょうか。特許法上で公然として知られているとは、発明者との間で守秘義務を負わない人に、知られていることを言います。公知に関しては一つ注意点があります。それは、出願前に発明者自身によって公知にしてしまった場合も決して例外ではなく、新規性を満たさなくなります。
新規性を満たしている条件は意外と複雑ですので、出願前に新規性のある発明なのかどうかを確認するようにしましょう。

新規性喪失の例外が認められる場合
ここまでで新規性について解説してきました。新規性を満たすかどうかは非常にシビアな評価基準があることが分かりました。しかし、実は例外的に救済が受けられる場合があります。ここではその「新規性喪失の例外(特許法第30条)」についてご紹介します。
先ほどの「公知」の定義の説明において、発明者自身によって公然として知られることとなった場合も公知になり新規性を失うと説明しました。しかし、この場合でも、一定の条件を満たせば救済を受けることが可能です。このことを特許法上の専門用語で「新規性喪失の例外」といいます。新規性喪失の例外が認められるのは、発明者自身による試験の実施、刊行物への発表、インターネットでの発表、販売、記者会見の実施など様々で、公開態様に関しては限定されていません。
新規性喪失の例外を適用してもらうためには以下の2点を満たす必要があります。まず1つ目は、「公開日から1年以内に例外規定の適用を受けたい旨の書面を特許出願と同時に提出すること」です。続いて2つ目は「特許出願日から30日以内に公開の事実等を証明する書面を提出すること」です。これら2点を満たしている場合に限り、特許を受けられる可能性が出てきます。もちろん新規性以外の条件を満たしていなければ特許取得は不可能になることを忘れないようにしましょう。

今回は発明の特許出願の際に必要となる条件、特に「新規性」に焦点を当てて解説してきましたが、いかがだったでしょうか。新規性という評価基準があることで、発明による科学技術・産業の発展が実現できているということが分かりました。また、ただ単に「新しいもの」という考え方ではなく、明確に評価する基準が存在していました。発明者の知識不足や不注意によって、うっかり発明を発表してしまうと特許を取得できなくなる可能性があるので注意が必要ですね。多くの発明は、このような厳しい評価基準を潜り抜けてきたと思うと身の回りの物事への見方も変わるかもしれませんね。