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【SKIPの知財教室(IP Hack)】発明とは? 発明と発見は違うんです。

2021.10.22

SKIP

「発明」という言葉を聞いて皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。私たちの身の回りにある歴史的に偉大な発明の例をあげるとすれば、1920年ごろ発明のテレビ、1970年代に発明された個人用のパソコン、かつては「不治の病」「亡国病」とまで恐れられていた結核の治療薬などがあります。このように私たちが普段から何気なく使っている家具や家電、調理器具、通信技術、医薬品などすべてが、研究者やエンジニアによる「発明」により誕生したものです。もちろんそれらは発明されなければ、私たちが使用することはありませんでした。ここでは発明と関連が強い特許法の目的とは何なのか、そして発明の種類などに触れながら、法上の「発明」についてご紹介していきます。

特許法の目的は?
まずここでは、特許法の目的について解説していきます。結論から言うと特許法の目的は特許法第1条によれば、「発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もって産業の発達に寄与すること」と定義されています。特許法の目的を少しかみ砕いて簡単に説明します。一般的にカバンやスマートフォンのような「モノ」として実在している個人の財産は、所有権または占有権という形で有体財産権として保護されており、肌身離さず持っていたり、自宅に保管しておいたりすることで安全に保護できます。しかし、自分の思想やアイデアといった「形がない財産」は、所有権または占有権という形で安全に自分のものとして保護できるでしょうか。そのような形がない財産=無体財産権は「モノ」と同じように保護することは難しいでしょう。「発明」とはこれまでには世の中にはなかったものを新たに考え出すこと、またそれらのアイデアを実現するための仕組みや工夫のことを指しています。つまり先述の内容を考慮すると「発明」は「形がない財産」ですので、個人(発明者)のものとして安全に保護することが難しくなります。もしも、私たちの住む場所が、発明に関する法律(特許法)が存在していない世界だとしたらどうなるでしょう。ある人が「匂いも送れるテレビ」を創るアイデア(発明)を思い付いて、苦労して試作品を作成して、銀行からお金を借りることに成功して、工場を作って大量製造販売をすることに成功したとします。このような場合、その発明を見たライバル企業は、その「匂いも送れるテレビ」を購入して分解し、その仕組を真似して似たような「匂いも送れるテレビ」をもっと安い値段で売り始めるのではないでしょうか。その理由は、アイデアには「形がない」ため、その苦労して開発した「匂いも送れるテレビ」の仕組みを、所有権または占有権という形で自分のアイデアとして安全に保護できないからです。かといって、発明者がアイデアを盗まれないために発明を隠してしまえば、せっかくの「匂いも送れるテレビ」の発明が世の中に浸透して社会が便利になることは考えられません。このような事態を避けるために「特許法」は定められています。特許制度では、発明の保護として一定期間は発明者に独占権の付与をする代わりに、その発明をもとに技術の更なる進歩を図るため第三者への利用機会を与えることが前提となっています。

特許法上の「発明」とは?「発見」との違い
続いては、特許法上の「発明」と発明には当たらない「発見」の違いについて解説していきます。「発明」とは特許法第2条第1項によれば、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」と定義されています。1つ目の「自然法則を利用していること」について説明します。自然法則とは、自然界において経験的に見いだされる科学的な法則を言います。つまり、「自転車で急ブレーキをかけると体が勝手に前に行く」のような現象は慣性と言われる自然法則そのものであり、この現象は発明には当たりません。また、「トランプのババ抜きの改良のジジ抜きのルール」のように自然法則を利用しないゲームのルールや数学の公式も発明には当たりません。2つ目の「技術的思想であること」について説明します。フィギュアスケートのトリプルアクセルの跳び方のような個人の能力に依存するもの、絵画・彫刻・音楽のような芸術的な創作物、各種説明書のように単なる情報の開示は、技術的思想とは言えず、発明にはなりません。3つ目の「創作であること」について説明します。もしもあなたが世界で初めて宇宙人と遭遇したとしても、あなたが宇宙人を創作したわけではありません。そのためあなたが宇宙人を「発明」したことにはならず、ただ「発見」したということになります。4つ目の「高度なものであること」について説明します。創作物に対して高度かどうかの明確な線引きがされているわけではなく、これはあまり高度ではない考案を保護するための実用新案法の保護対象と区別するために存在している評価基準です。そのため、「発明」の判断において、実務的には「高度ではない」ということが原因で却下されるということはありません。以上の4点を満たしていることが、特許法上の「発明」に該当するために必要なことです。

「物の発明」と「方法の発明」
特許法上での「発明」の考え方について解説してきましたが、ここでは発明の種類についてご紹介していきます。特許法上では発明は大きく分けて2つに分類されています。それが「物の発明」と「方法の発明」です。さらに「方法の発明」には「単純な方法の発明」と「物を生産する方法の発明」という種別もあります。これらの種類によって、無事に特許権が取れた発明であっても、特許権の効力が及ぶ範囲には差異があります。1つ目に「物の発明」について説明していきます。物の発明には「テレビ」や「スマートフォン」などの具体的な形をもつ製品などの発明が該当します。物の発明の特許権の効力としては、その物の生産、使用、譲渡、貸渡し、輸出、もしくは輸入、譲渡・貸渡しの申し出(譲渡・貸渡しのための展示を含む)を行う行為が挙げられます。2つ目に「単純な方法の発明」について説明していきます。単純な方法の発明には、空気中のPM2.5の濃度を測定する方法などが該当します。単純な方法の発明の特許権の効力としては、その方法を使用する行為(空気中のPM2.5の濃度を測定すること)だけが該当します。3つ目に「物を生産する方法の発明」について説明していきます。物を生産する方法の発明には、「新型感染症ワクチンの製造方法」や「新しい化粧品の製造方法」などが該当します。この発明の特許権の効力としては、その物の生産、使用、譲渡、貸出し、輸出・輸入、または譲渡・貸出しの申出(譲渡・貸出しのための展示を含む)を行う行為が挙げられます。このように「発明」と言っても種類があり、それらの種類ごとに効力の及ぶ範囲にも違いが生まれます。つまり、物の発明>物を生産する方法の発明>単純な方法の発明の順に、特許権の権利範囲は広いということができます。

今回は特許法上での「発明」について解説してきましたが、いかがだったでしょうか。特許法はあまり馴染みのない法律かもしれません。しかし、特許法が存在しているからこそ、歴史的にも影響のある発明が次々生まれ、私たちの生活はより便利になっています。さらに、「発明」と言っても3種類に分類することができ、それぞれの種類によって特許権が及ぶ範囲にも違いがあるんですね。今回ご紹介したような知識が少しあるだけでも、世の中のあらゆる物事への見方が変わるのではないでしょうか。今後もさらに素晴らしい発明が生まれることを期待しましょう。