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【SKIPの知財教室(IP Hack ®)】じっくり®法解説 Claim #20 先使用権制度の活用方法とは?戦略的なノウハウ管理について解説

先使用権 じっくり法解説 IP HACK 特許

2025.08.14

SKIP

先使用権制度の活用方法とは?戦略的なノウハウ管理について解説

特許をめぐる企業間の攻防は年々激しさを増しており、権利を取得していない技術やノウハウであっても、他社の特許によって事業継続が脅かされるリスクが高まっています。こうしたなか、自社が独自に蓄積してきた技術を守る手段として注目されているのが「先使用権制度」です。

先使用権は、特許権よりも前から技術を実施していた事実が証明できれば、その後に取得された特許権の効力を受けずに事業を継続できる仕組みです。本記事では、先使用権制度の基本的な仕組みとともに、企業がノウハウを活用するうえでの戦略的な知的財産管理のあり方について解説します。

先使用権とは?制度の概要と他の権利との関係

先使用権とは、他社が特許出願する前から独立して同一内容の発明を実施または実施準備していた者が、特許権の効力を受けずに事業継続できる権利をいいます(特許法第79条)。正式には「先使用による通常実施権」と呼ばれ、無償かつ通常の範囲内での継続実施が認められます。

この制度は特許のみならず、実用新案法(第26条)、意匠法(第29条)にも準用されており、企業が保有するノウハウや秘匿技術を実施していた場合においても、法的な保護を受ける道が確保されています。

知財戦略における先使用権の重要性

製品開発・製造のグローバル化が進み、技術力が拮抗する現代において、他社との競争がより複雑化しています。そのため、企業にとっては自社の技術をどのように保護するかという「知財戦略」が重要な経営課題となっています。

例えば、ある技術をあえて秘匿し営業秘密として管理する場合、その情報が外部に知られずに自社内で実施されていたとしても、後から他社が同じ内容で特許を取得すれば、自社が侵害者となるリスクもあります。その際、先使用権の証拠があれば、特許権の効力を受けずに事業を継続できます。

先使用権制度を活用するメリット

先使用権制度を適切に活用することで、自社の技術を守りながら柔軟に知財戦略を構築できるというメリットがあります。特許を取得していなくても、事業継続に必要な「実施の自由」を確保できる点は、研究開発型の中小企業やスタートアップにとっても大きな利点です。

また、次のようなメリットもあります。

  • 他社の特許に依存せず、継続的に製品・サービスを提供できる
  • 特許出願のタイミングを逃した技術も、一定の条件下で保護される
  • 営業秘密との併用で、長期的な技術優位性を維持できる
  • 権利取得コストを抑えつつ、訴訟リスクへの備えができる

万が一、競合他社から特許侵害の指摘を受けた場合でも、証拠をもとに先使用権を主張できれば、製品の販売停止や損害賠償請求といった重大なリスクを回避することが可能になります。

権利化・秘匿化・公知化の戦略的選択

技術をどのように扱うかは、事業性・独自性・模倣リスクなどをもとに戦略的に判断されます。選択肢は主に以下の3つです。

  • 権利化(特許出願):模倣防止やライセンス収入を見込めるが、20年の期間制限あり。
  • 秘匿化(営業秘密):適切な管理により半永久的な保護が可能。ただし漏洩リスクあり。
  • 公知化(技術公開):他社による特許出願を防げるが、自社独占はできない。

この中で秘匿化を選ぶ場合には、先使用権の証拠を確保することが、事業継続の命綱となります。

先使用権の証拠確保と活用の実務ポイント

先使用権を主張するには、事業やその準備を他社の特許出願「以前」から行っていたことを立証する必要があります。そのため、次のような証拠を計画的に確保することが重要です。

  • 技術の実施記録(設計書、試験記録、製造日報など)
  • 研究開発の経過資料(社内報告書、仕様書など)
  • 事業準備の証拠(仕入契約、設備投資記録など)
  • 日付証明(タイムスタンプ、郵送記録、メールログ等)

製品単位での証拠収集は負担が大きくなりますが、事業全体に対する抗弁力を高める上では有効な手段です。

海外における先使用権の留意点

日本の先使用権は国内限定であり、外国においても事業を展開する場合には、各国の法律に基づく対策が必要です。国によっては輸入行為に先使用権が認められない場合もあるため、輸出・販売戦略とあわせてグローバルな知財リスクマネジメントが求められます。

まとめ|ノウハウを守るための戦略的備えを

特許出願の増加や企業間競争の激化を背景に、営業秘密を活用した技術管理の重要性が高まる中、先使用権は「守りの知財戦略」として機能します。

しかし、単に秘匿しているだけでは、訴訟リスクを回避できません。確実な証拠の確保、知財管理体制の構築、グローバルな法制度の理解を通じて、自社の技術と事業を継続的に保護することが、今後の企業競争力のカギとなります。

SK弁理士法人では、特許や営業秘密をめぐる戦略的な知財管理の支援を行っており、先使用権制度の活用に向けたアドバイスや証拠管理の体制構築についても対応可能です。

自社のノウハウを確実に守るために、ぜひ一度SK弁理士法人にご相談ください。

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