特許権が成立した後、特許異議申立や無効審判請求を受けた際に特許を守るために行う「訂正請求」。あるいは、特許後に瑕疵(かし)を見つけた際に行う「訂正審判」。
これらの手続きにおいて、新規性や進歩性といった技術的な特許要件の検討は極めて重要ですが、それと同じくらい注意を払わなければならないのが、事務的な「承諾」の手続きです。
承諾の手続きを失念すると、手続きの却下を招くばかりか、将来的な法的トラブルや特許の取消・無効リスクを招くことになりかねません。本記事では、訂正における承諾のルールと実務上の注意点を詳しく解説します。
- 専用実施権者・質権者:法律上、常に事前の承諾が必要 。
- 通常実施権者:法律上は不要だが、契約内容次第で義務が生じる 。
- 手続き前に「登録原簿」と「契約書」の双方を確認すること 。
1. 法律上のルール:専用実施権者・質権者の承諾は「必須」
特許法では、権利関係の安定を図り、利害関係者の不利益を防ぐため、特定の権利者がいる場合にはその承諾がなければ訂正を請求できないと定めています 。
訂正審判(特許法第127条)
特許権を単独で訂正する「訂正審判」においては、以下の定めがあります。
異議申立・無効審判における訂正請求
異議申立への対応(第120条の5第9項)や無効審判中の訂正請求(第134条の2第9項)においても、上記の第127条の規定が準用されます 。
これらの権利者が特許登録原簿に記載されている場合は、必ず事前に連絡を取り、承諾書を取得する必要があります。これがない場合、特許庁は訂正の手続きを受け付けません 。
※特許庁が提供する「訂正請求書チェック票」にも承諾書のチェック欄があります
2. 実務上の要件:通常実施権者の承諾は「契約次第」
ここで注意が必要なのは、法律上の「手続き要件」ではないですが、「通常実施権者の承諾なしに勝手に訂正して良い」とは限らないという点です 。
通常実施権者の承諾(法改正による変化)
かつては通常実施権者の承諾も法律上の要件でしたが、改正により現在は不要となっています 。これは、通常実施権者が膨大な数に上るケース(パテントプール等)で手続きが停滞するのを防ぐためです 。
ライセンス契約書の確認が不可欠
しかし、当事者間の「ライセンス契約書」において、「訂正時には事前の書面による承諾を要する」旨の条項が設けられていることがよくあります 。もしこの条項がある状態で承諾なしに訂正を行うと、契約違反(債務不履行)となります 。
特許庁の手続きは通っても、後からライセンシーとの信頼関係が崩れたり、損害賠償を請求されたりするリスクがあるため、契約書の再チェックは必須です 。
3. 訂正が必要な場合に執るべきアクション
訂正の必要がある際、特に異議申立への対応期間などは非常に限られています。慌てずに以下のステップで進めましょう 。
- 登録原簿の確認
専用実施権者や質権者が登録されているか確認し、該当があれば直ちに承諾取り付けに動く(法律上の必須要件) 。 - ライセンス契約書の確認
通常実施権者との契約に「訂正時の承諾」や「通知」の条項がないかチェックする 。 - 適切なコミュニケーション
たとえ契約上の義務がなくても、特許を守るための最善の策であることを説明し、一報を入れるのがビジネス上のマナーとして安全です 。
※本記事の内容は、記事作成時点の情報および法令に基づいています 。正確な情報の提供に努めておりますが、内容の完全性・正確性を保証するものではなく、本記事の内容に関して生じた損害等について一切の責任を負いません 。個別の事案については必ず弁理士等の専門家にご相談の上、手続きを進めていただくよう強く推奨いたします 。




