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PPAP問題の再発を防ぐ方法

2017.02.02

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以下の記事で詳細に記載しましたが、PPAP商標出願を拒絶するのは、簡単ではないと思います。

現状のままでは、PPAP問題のように、著名なフレーズを他人が出願手数料を支払わずに片っ端から出願するケースはなくならないと思います。そのような問題の再発を防ぐには、以下の対策が必要です。

1.特許庁による対策
 特許庁は、行政機関であり、商標法の枠内でしか動くことができません。出願手数料を支払わなくても商標出願が有効であることは商標法上明確であり、特許庁は、これに対して何もすることができません。また、商標出願を拒絶する理由は、商標法で明確に規定されており、特許庁が気に入らないから拒絶することはできません。4条1項7号による公序良俗違反の規定は、特許庁が便利に使用できますが、その判断を裁判所が支持するかどうかは分かりません。
 特許庁ができるのは、手数料補正命令を発行するタイミングと、却下のタイミングを早めることです。
 商標法が準用する特許法では、補正命令と、却下について、以下のように定められています。重要なのは、「相当の期間を指定して」補正命令が発行されていると規定されていることです。この「相当の期間」は、通常は、30日ですが、法律による規定ではないので、特許庁が勝手に決めることができます。
 また、出願してから補正命令が発行されるまでに数週間かかります。現状では、この数週間+30日の間、ベストライセンス社は、お金を払わずに、出願を維持することができています。この期間が問題を引き起こしています。
 特許庁が運用を変更をして、例えば過去1ヶ月以内に出願手数料を支払わない出願を10件以上した出願人に対しては、出願があった日に即座に補正命令を発行し、応答期間を1日にして、1日経過後に却下をすればいいと思います。こうすれば、ベストライセンスは、1日しか出願を維持することができないので、現在のトロールによるビジネスモデルが崩れます。
 特許庁としてもこのような体制を整えるのは大変だと思いますが、ベストライセンス社に行為によって健全な企業活動が阻害されていますので、行政官庁として積極的に取り組むべきだと思います。


(手続の補正)
第十七条  手続をした者は、事件が特許庁に係属している場合に限り、その補正をすることができる。
(略)
3  特許庁長官は、次に掲げる場合は、相当の期間を指定して、手続の補正をすべきことを命ずることができる。
一  手続が第七条第一項から第三項まで又は第九条の規定に違反しているとき。
二  手続がこの法律又はこの法律に基づく命令で定める方式に違反しているとき。
三  手続について第百九十五条第一項から第三項までの規定により納付すべき手数料を納付しないとき。

(手続の却下)
第十八条  特許庁長官は、第十七条第三項の規定により手続の補正をすべきことを命じた者が同項の規定により指定した期間内にその補正をしないとき、又は特許権の設定の登録を受ける者が第百八条第一項に規定する期間内に特許料を納付しないときは、その手続を却下することができる。


2.出願人による対策
 著名なフレーズを持っている人は、将来の商品化を考えている場合には、積極的に商標出願をしておくべきだと思います。PPAP商標の拒絶が容易でないことから分かるように、他人が先に出願すると、その人が商標権を取得してしまう可能性があります。
 商標法では、商標は創作物ではなく、選択物であると考えられているので、そのフレーズを考えた人以外がそのフレーズについて商標出願することは、道義上の問題はあるとしても、法律上の問題はありません。だから、特許庁は対応に苦労しているのです。
 また、商標法は、先願主義なので、他人がそのフレーズについて、先に商標出願をすると、その他人に権利が付与されることになります。これは、著名なフレーズだけではなく、商品名でも同じです。昔から使用している商品名であっても「ウォークマン」のような著名なものでなければ、他人がその商標について先に商標登録をしてしまう可能性があります。
 他人によって商標登録をされてしまいますと、その対応には多額の費用がかかりますので、事前に適切な対応を行うことが重要だと思います。

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