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平成23年法律改正ざっくり4 再審の訴え等における主張の制限

2012.03.08

伊藤 寛之

特許法等の一部を改正する法律(平成23年6月8日法律第63号)
平成23年法律改正(平成23年法律第63号)解説書
第1章 通常実施権等の対抗制度の見直し
第2章 冒認出願等に係る救済措置の整備
第3章 審決取消訴訟提起後の訂正審判の請求の禁止
第4章 再審の訴え等における主張の制限
(主張の制限) 第百四条の四
特許権若しくは専用実施権の侵害又は第六十五条第一項若しくは第百八十四条の十第一項に規定する補償金の支払の請求に係る訴訟の終局判決が確定した後に、次に掲げる審決が確定したときは、当該訴訟の当事者であつた者は、当該終局判決に対する再審の訴え(当該訴訟を本案とする仮差押命令事件の債権者に対する損害賠償の請求を目的とする訴え並びに当該訴訟を本案とする仮処分命令事件の債権者に対する損害賠償及び不当利得返還の請求を目的とする訴えを含む。)において、当該審決が確定したことを主張することができない
一 当該特許を無効にすべき旨の審決
二 当該特許権の存続期間の延長登録を無効にすべき旨の審決
三 当該特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正をすべき旨の審決であつて政令で定めるもの

特許法施行令
 第五章 主張の制限に係る審決 第十三条の四
 特許法第百四条の四第三号の政令で定める審決は、次の各号に掲げる場合についてそれぞれ当該各号に定める審決とする。
一 特許法第百四条の四に規定する訴訟の確定した終局判決が当該特許権者、専用実施権者又は補償金の支払の請求をした者の勝訴の判決である場合当該訴訟において立証された事実以外の事実を根拠として当該特許が特許無効審判により無効にされないようにするためのものである審決
二 特許法第百四条の四に規定する訴訟の確定した終局判決が当該特許権者、専用実施権者又は補償金の支払の請求をした者の敗訴の判決である場合当該訴訟において立証された事実を根拠として当該特許が特許無効審判により無効にされないようにするためのものである審決


無効審判・訂正審判の確定によって、判決の基礎となった行政処分が変更されるので、文言上、再審事由が発生することになります。しかし、こんな蒸し返しが認められたら、せっかく勝訴してほっとしていた人にしてみればたまったもんではないので、このような事由による再審請求を原則として認めないことになりました。
無効審決確定については一律で再審請求が否定されましたが、訂正については、色々なケースが考えられるということで、再審請求できない場合が政令で定められています。政令の内容は上記の通りですが、非常に分かりにくいですね。紛争の蒸し返しになる場合は、再審請求が禁止され、そうでないものは再審請求が認められる可能性があると解説されていますが、特に、1号についてはしっくりきません。
当該訴訟において立証された事実以外の事実を根拠として訂正審決が確定した場合は、再審請求が禁止されると読めますが、改正本によれば、以下のようになっていて、訴訟と無関係な理由で、訂正審決があった場合は、再審請求ができる(その確定を主張できる)、と記載されているように読めます。
同条第1号で、再審の訴えにおいてその確定を主張できる訂正認容審決として想定しているのは、例えば、発明の普及目的で権利の一部を縮小するために、特許権者が無効理由と関係なく訂正をしたような場合における訂正認容審決等がある。
この点は、よく分からないので、実務上問題になったときにじっくり考えることにします。
第5章 審決の確定の範囲等に係る規定の整備
第6章 無効審判の確定審決の第三者効の廃止
第7章 料金の見直し
第8章 特許料等の減免に係る関係法令の見直し
第9章 発明の新規性喪失の例外規定等の見直し
第10章 出願人・特許権者の救済手続の見直し
第11章 商標権消滅後一年間の他人の登録排除規定の廃止

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