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早期審査を活用して自社技術の流出を防止しつつ特許を取得

2010.07.15

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多くの企業(特に中小企業)にとっては、一つ一つの自社技術が自社の命運を握っており、その技術にとって特許が取れるかどうかは死活問題であり、また、技術が公開されて特許が取れないという事態は是が非でも避けたいと考えています。特許を取得したいが、進歩性をクリアできるかどうかの判断は微妙なこともあり、出願に踏み切れないという相談を受けることがあります。
そのようなときは、早期審査の申請を進めています。早期審査とは、一定の要件を満たす場合には、特許庁が特別に早く審査をするという制度です。要件は、(1)中小企業であるか、(2)外国出願をしているか、(3)実施をしているか、(4)環境技術に関するものかです。詳しくは、以下のページをご参照下さい。
http://www.jpo.go.jp/torikumi/t_torikumi/souki/v3souki.htm
早期審査の申請をして認められると、約半年ほどで審査結果を得ることができます。この結果がよければ、そのまま特許を取得することができ、先行技術が見つかって特許にするのが難しそうであれば、出願公開前に取り下げれば、その出願があったことは誰にも知られず、そのままノウハウとして、自社技術を保持することができます。出願を取り下げる期限は、安全なのは1年3ヶ月以内、それよりも遅い時期だと、公報を作成する部署に電話をして出願を取り下げた旨を伝えた方がいいようです。誤って公開されると大変なので、余裕を持って取り下げた方がいいです。
早期審査は、要件を満たしていれば、申請が却下されることはないと思います。中小企業の場合は、特に証明書を添付することなく、自社が中小企業である旨を述べれば、それで終わってしまいます(追加の証拠が求められる場合があるかも知れません。)中小企業以外が早期審査を申請する場合は、先行技術調査が義務付けられていますが、中小企業の場合は知っている文献を記載すれば足ります。
このように、早期審査をうまく利用すれば、自社技術を特許にするか、又は特許にならないのであればノウハウとして保持するという特許戦略を取ることができます。
また、通常は、出願公開後に審査が行われるので、出願を取下げて出し直すということは不可能ですが、早期審査を利用すれば出願を取下げて出し直すことが可能になります。審査官との相性が悪い場合には、一旦取下げて出し直して、別の審査官に当たるのを期待してみたり、拒絶理由の内容を避けることができるように明細書を描き直したものを出願したりといったことも可能です。出願公開前に審査を受けられるのは、非常にメリットが大きいので、積極的に利用するのがいいと思います。
最近は、スーパー早期審査というもっとすごいやつもあるようです。
http://www.jpo.go.jp/torikumi/t_torikumi/souki/v3souki.htm
この制度を使えば、2ヶ月ほどで審査結果を得ることができます。
早期審査の申請から17日で特許されたことで有名になりました。某新聞は、「たったの17日間しか審査しないで特許を付与するとは、特許の信頼性を落とすのではないか?」というコラムを掲載していましたが、審査官一人辺りの年間処理件数は200件を超えているので、17日間のうち実際に審査官が検討に費やした時間が3日あれば、通常の出願よりもよっぽどしっかりと審査していることになります。

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