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例外適用のための証明書の要件は、特許と意匠で全然違う

2012.05.24

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特許では、以下のファイルのp9 「3. 第3項に規定された「証明する書面」について」で、出願人は、証明書を自分で作成してもいいと記載されています。
http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/shiryou/kijun/kijun2/hatumei_reigai.htm
http://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/pdf/hatumei_reigai/tebiki.pdf
一方、意匠は、審査便覧を見てみると、以下のPDFに記載の通り、「出願人が自分で作成したものは認めない」となっています(便覧10.33)。思わず目を疑って、特許庁に聞いてみましたが、「特許と意匠は違います」で片付けられてしまいました。
http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/shiryou/kijun/kijun2/isyou_binran.htm
http://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/pdf/isyou_binran/10_33.pdf

なお、意匠の場合、二回目以上、公知になっても、最初の公知の事実だけ証明すればいいとのことです(便覧10.37)が、特許の場合は、密接不可分でない限りは、毎回の公開に対して証明書を作成する必要があります。

10.33
意匠法第4条第3項にいう「証明する書面」として、出願人自らが
作成した証書等が提出された場合の取扱い
 出願人自らが作成したいわゆる証明書(自らが証明者として署名したもの)(注)のみが
提出された意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとする意匠法3条第1項第1号又
は同条同項第2号に該当するに至った意匠については、同規定の適用を認めず審査を進め
る。
 ただし、「証明する書面」を補充することができるものとする。

(説明)
 意匠法第4条第3項の「証明する書面」として提出されたものであっても出願人
自らが公開事実を証明する書面は、その事実の存在を客観的に判断し確信を抱かせ
る根拠としては十分なものとは言い難いものであるから、同条第3項にいう「証明
する書面」として扱わないものとする。いわゆる「証明書」による場合は、本人以
外の者の証明を必要とする。
 しかし、同法第4条第2項の規定において例外事由とされる公開行為は多岐にわ
たり、出願人が短期間に立証することに困難を伴うものがあると考えられるから、
出願人自らが公開事実を証明する書面のみが提出されている場合には、「証明する
書面」の範囲内で、その公開事実の存在につき心証を得ることのできる資料を補充
する機会を与えることとした。
(注)宜誓書の形式のものも含む。
参考判決:東京高裁平成4年(ラ)第19号「自動車用ホイール」 判決日平成4年9月8日
 「意匠が右条項(意4条2項)に規定する意匠であることを、意匠登録出願人自身が作成した書
面のみで認定することは、一般には客観性が担保されないため相当ではないが、だからといって、
右事項が第三者の作成した書面のみによって直接的に証明されなければならないと解するのは相当
でなく、意匠登録出願人自身が作成した書面が提出されている場合には、これと第三者が作成した
書面を総合的に判断して、右事項が肯認し得る程度に証明されていれば足りるものと解するのが相
当である。
10.37
意匠法第4条第2項の「該当するに至った日」と意匠登録出願の間
になされた公開行為についての取扱い
1.意匠登録を受ける権利を有する者が、意匠登録出願前に意匠法第3条第1項第1号又
は第2号の規定に該当するに至った意匠を複数回に亘って公開した場合には、その意匠が
最先の公開について意匠法第4条第2項の規定の適用を受けるものであれば、第2回以降
の公開によっても、その意匠は意匠法第3条第1項第1号又は第2号に該当するに至らな
かったものとする。

2.意匠法第4条第2項の「該当するに至った日」と意匠登録出願の間に第三者が「該当
するに至った意匠」と同一の意匠を公開した場合には、その意匠は第三者の公開によっ
て意匠法第3条第1項第1号又は第2号に該当したものとする。
  ただし、第三者の公開が「該当するに至った意匠」の公開に基づくことが明らかな
(注)
とき
はこの限りでない。
(注)「第三者の公開が該当するに至った意匠の公開に基づくことが明らかなとき」とは、例えば「展示会
の紹介記事」のようなことをいう。
(説明)
 意匠法第4条第2項に規定する「前条第1項第1号又は第2号に該当するに至っ
た」意匠とは、意匠登録を受ける権利を有する者の行為により初めて公開された意匠
ということを意味し、その意匠について「同項第1号又は第2号に該当するに至らな
かったものとみなす」ということは、前記行為によって初めて公開された意匠につい
て、その公開の日から6月以内にその者が出願をすると共に意匠法第4条第3項の手
続をしたときに限り、新規性を喪失するに至らなかったものとみなすものである。
 そして、意匠法第4条第2項は、意匠登録を受ける権利を有する者の公開行為に何
等制限を設けず、意匠に係る物品を製造し販売する等、第2回以降の公開について意
匠登録出願人自身では律し切れない場合も例外事由とするものであるから、前記公開
行為によって初めて公開された意匠がその公開に基づいて再度公開される限り、たと
えそれが第三者の公開行為によるものであっても、そのことによって当該擬制が否定
されることはないと解される。
 しかし、意匠法第4条第2項は、意匠の登録要件の判断を最先の公開時に行うとす
るものではなく、意匠登録を受ける権利を有する者(原始的には創作者)が、当該権
利の発生原因たる意匠の創作に基づいて、意匠登録出願前にその創作に係る意匠を公
開することを許容するに止まるから、第三者が別個に同一の意匠を創作し公開した場合についてまで、その意匠が新規性を喪失しないとするものではない。
 したがって、本文のとおり取り扱うものとする。

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