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「モイスチャーリポソーム」(商品:化粧液)は識別力なし。但し3条2項適用

2012.09.04

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http://shohyo.shinketsu.jp/originaltext/tm/1258366.html
1 本願商標
本願商標は、「MOISTURE」及び「LIPOSOME」の欧文字を、二段に横書きしてなり、第3類に属する願書記載の商品を指定商品として、平成22年9月17日に登録出願され、指定商品については、原審における同23年4月18日付けの手続補正書により、第3類「リポソーム配合の保湿用化粧液・美容液」と補正されたものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定は、「本願商標は、『MOISTURE』及び『LIPOSOME』の文字を二段に普通に用いられる方法で書してなるところ、上段の『MOISTURE』は『水分、湿気、肌や毛髪について言う』を意味し、化粧品などの説明に用いる語であり、また、下段の『LIPOSOME』は『生体膜と同じくリン脂質の二分子膜の構造からなる微少なカプセル』を意味し、その指定商品との関係では化粧品の原材料として用いられ、『リポソーム化粧品』が取引・販売等に資されている実情がある。そうすると、本願商標よりは『湿気・うるおいを与え、リポソームを含有するもの』程の意味合いを看取させるに止まり、これをその指定商品中、上記意味合いに照応する『化粧品』に使用しても、単に商品の原材料及び品質を表示するにすぎず、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」と認定、判断して本願を拒絶したものである。
3 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号の該当性について
本願商標は、上記1のとおり、「MOISTURE」及び「LIPOSOME」の文字を二段に普通に用いられる方法で表したものであり、これを、その指定商品に使用しても、「湿気・うるおいを与え、リポソームを含有する化粧液・美容液」であること、すなわち、商品の品質を表示する標章のみからなる商標であって、商標法第3条第1項第3号に該当するものと判断するのが相当である。
(2)商標法第3条第2項の該当性について
ア 請求人提出の証拠(原審において、甲第1号証及び甲第20号証及び当審において、甲第21号証ないし甲第25号証(いずれも枝番を含む。)及び同人の主張によれば、次の事実が認められる。なお、枝番の全てをいうときは、枝番を省略する。
(ア)請求人は、「MOISTURE」及び「LIPOSOME」の文字を二段に表した商標を(その容器等に)付した商品「リポソーム配合の保湿用化粧液・美容液」(以下「本件商品」という。)を、1992年(平成4年)11月から継続して、製造、販売している(甲3の2ないし5、甲11の1ないし5、甲12の1ないし8、甲12の10、甲13ないし甲15、甲17、甲18、甲20、甲22、甲23の1及び甲24)。
(イ)請求人は、本願商標を付した本件商品について、2005年(平成17年)から2010年(平成22年)までの間に、雑誌広告及び電車の中吊り広告、駅の柱巻広告やビルの外壁、屋外広告等を行い(甲8、甲13、甲14及び甲18)、その広告費は、約1億9千万円である(甲8)。
(ウ)「@cosme」のウェブサイト上で、毎年開催している「@cosmeベストコスメ大賞」において、本件商品は、2006年(平成18年)及び2008年(平成20年)に、ジェル・美容液部門第1位、2009年に殿堂入りコスメを受賞し、「@cosmeクチコミランキング2010年版/使ってよかった化粧品」(株式会社講談社:2010年3月発行)として紹介され(甲11の2)、「マキア12月号増刊号」(株式会社集英社:2011年11月発行)には、「発売から18年今なお愛される名品」「保湿の名品」の記載や、モデル、フリーアナウンサー、美容コーディネーターが、本件商品について、「発売当時に」「10年以上前」「3年ほど前から」のように、長年愛用しているとして、本願商標を付した本件商品を掲載し、評価している記事が掲載されている(甲13)。
(エ)本件商品について、1992年(平成4年)から2010年(平成22年)までの間に、約400万個を出荷し、約508億円を売り上げている(甲9)。
イ 本件商品の容器に付されている「MOISTURE」及び「LIPOSOME」の文字を二段に表した商標は、本願商標と外観上同一視できるものである。
ウ 上記ア及びイからすれば、本願商標は、その指定商品「リポソーム配合の保湿用化粧液・美容液」について、請求人により使用された結果、需要者が請求人の業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものと判断するのが相当である。
してみれば、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備するというべきである。
(3)むすび
以上のとおり、本願商標は、その指定商品について、商標法第3条第2項の要件を具備するものであるから、同条第1項第3号の規定に該当するとして、本願を拒絶すべき限りでない。
その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

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