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米国では虚偽表示に対して誰でも損害賠償請求ができる

2010.11.16

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米国特許法292条は、特許の虚偽表示に関する規定です。
特許に関係のない商品に「patent」の表示を付したり、特許出願に関係のない商品に「patent pending」の表示を付すと、それが公衆を欺く意図でなされた場合には、各行為につき500ドル以下の罰金が課されます。
この「各行為」の意味について、従来は、多数の製品を販売した場合でも、1回の行為であると考えられていましたが、The Forest Group, Inc. v. Bon Tool Co. (Fed. Cir. 2009)において、多数の製品を販売した場合は、各製品が各行為に該当すると判示されました。これによって、罰金の額が非常に高額になる可能性が出てきました。
驚くべきことに、この罰金の請求を誰でも行うことができます。そして、この請求で得たお金の半分を国に収めればいいとなっています。製品1個につき、$500以下ですので、製品の販売個数が多い場合には罰金の額の多額になる場合があります。そこで、Forest事件以降、米国では、「マーキングトロール」というのが流行っているそうです。マーキングトロールは、特許権が切れているにも関わらず特許表示を続けている製品を探し出して訴訟を提起する者を指します。
このような状況を改善するために、虚偽表示に基づく訴訟の原告適格を「本条違反により競争を阻害された者」
に制限するように法改正をする動きもあるようです。この資料の2ページ目しかし、未だ法改正はされていません。
日本でも虚偽表示の規定がありますが、違反した場合は刑事罰の対象になるのであって、民間人が民事訴訟を提起してお金をもらうということはできません。
35 U.S.C. 292 False marking.
(a) Whoever, without the consent of the patentee, marks upon, or affixes to, or uses in advertising in connection with anything made, used, offered for sale, or sold by such person within the United States, or imported by the person into the United States, the name or any imitation of the name of the patentee, the patent number, or the words “patent,” “patentee,” or the like, with the intent of counterfeiting or imitating the mark of the patentee, or of deceiving the public and inducing them to believe that the thing was made, offered for sale, sold, or imported into the United States by or with the consent of the patentee; or Whoever marks upon, or affixes to, or uses in advertising in connection with any unpatented article the word “patent” or any word or number importing the same is patented, for the purpose of deceiving the public; or Whoever marks upon, or affixes to, or uses in advertising in connection with any article the words “patent applied for,” “patent pending,” or any word importing that an application for patent has been made, when no application for patent has been made, or if made, is not pending, for the purpose of deceiving the public – Shall be fined not more than $500 for every such offense.
(b) Any person may sue for the penalty, in which event one-half shall go to the person suing and the other to the use of the United States.
(虚偽表示の禁止)
第188条 何人も、次に掲げる行為をしてはならない。
1.特許に係る物以外の物又はその物の包装に特許表示又はこれと紛らわしい表示を付する行為
2.特許に係る物以外の物であつて、その物又はその物の包装に特許表示又はこれと紛らわしい表示を付したものの譲渡等又は譲渡等のための展示をする行為
3.特許に係る物以外の物の生産若しくは使用をさせるため、又は譲渡等をするため、広告にその物の発明が特許に係る旨を表示し、又はこれと紛らわしい表示をする行為
4.方法の特許発明におけるその方法以外の方法を使用させるため、又は譲渡し若しくは貸し渡すため、広告にその方法の発明が特許に係る旨を表示し、又はこれと紛らわしい表示をする行為
(虚偽表示の罪)
第198条 第188条の規定に違反した者は、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処する。

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