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Written description要件違反に基づくSummary Judgementが差し戻された事案(Laryngeal Mask Co. v. Ambu AS)

2010.09.27

伊藤 寛之

米国での侵害訴訟は、陪審員なしでクレーム解釈を行い、その後、陪審員に争いのある事実について審理してもらうという順序で進みます。陪審員による事実審理を経るまでも判決を下せると思った場合には、当事者の申立により、裁判官は、Summary Judgmentの判決を下すことがあります。つまり、Summary Judgmentとは、陪審員による事実審理なしでの判決ということになります。
「CAFCは地裁判決を4つの基準で再検討する(Standard of reveiw)」の記事でも記載しましたが、CAFCは陪審員の判断に重きを置きますので、陪審員の審理を経ていないSummary Judgmentは、CAFCでひっくり返りやすいということになります。
Patently-oに以下の記事がありました。

Written Description, Claim Scope, and Showing Possession of Hidden Embodiments
Laryngeal Mask Co. v. Ambu AS (Fed. Cir. 2010)

この事件では、Written Description要件が満たされているかどうかが争点になっていて、地裁は、Written Description要件違反に基づいて特許無効のSummary Judgmentの判決を出しました。
これに対して、CAFCは、Written Description要件違反であるかどうかは、本件では、陪審員の判断に委ねるべきであるとして差し戻しをしました。
ところで、一般原則としては、事実問題(question of fact)は陪審員が判断して、法律問題(question of law)は裁判官が判断することなっています。法律問題と事実問題の切り分けは非常に難しく、多くの場合、法律問題と事実問題が混在しています。
一般的には、以下のように考えられています。但し、新規性の判断でも条文の文言解釈が問題になる場合は、法律問題が含まれることになりますので、法律問題と事実問題の切り分けは事案ごとに判断する必要があります。
法律問題:クレーム解釈
事実問題:written description要件、新規性、ベストモード
これらの混合:自明性、enablement

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