情報提供・異議申立・無効審判の比較
2016.03.02
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異議申立は、無効審判に比べると気楽に行うことができますが、情報提供に比べると、結構大変です。
情報提供に比べると異議が大変な理由は、以下の通りです。
・情報提供は、完全に匿名でできるが、異議は、匿名ではできない。ダミーを探すことは容易ではない。
・情報提供は、特許文献の提出を省略できるが、異議は、全ての書証を最低3部提出しなければならない。印刷がかなり大変。
・情報提供は、外国の文献であっても英訳は必要ないが、異議は、抄訳の提出が必要。
・情報提供は、出願人が補正によって拒絶理由を回避した場合には、新たな文献を提出して対応できるが、異議では、訂正請求があった場合に「参考文献」として新たな文献を提出することができるが、どれくらい参考にしてもらえるか未知数。そうすると、異議申立の時点で訂正請求を考慮した文献も提出しておく必要があるが、訂正請求の内容を予想するのは非常に難しい。
以上の点を考慮すると、情報提供によって権利化を阻止することが戦略として優位性がある。審査官がいまいちで特許性がないものに特許が付与された場合には異議申立を検討するのがいい。
異議申立が、無効審判に比べると簡単な理由は、以下の通りです。
・異議は何人もできるが、無効審判は、利害関係人しかできない。ダミーを使えないので、実名がでてしまう。
・異議は、書面審理だが、無効審判は、口頭審理。
・異議決定に対する取消訴訟の被告は特許庁だが、無効審決に対する取消訴訟の被告は請求人なので、応訴負担が大きい。
・異議で負けても同じ内容で無効審判が可能だが、無効審判で負けると同じ内容で再度の無効審判はできない。
一方、無効審判が異議よりも優位な点は、以下の通りです。
・訂正請求があったときは、無効審判請求書を補正して新たに無効理由を主張することができる。
・特許権者側の主張に対して反論する機会が多い。
・口頭審理でいいたいことを十分に主張できる。
以上の点を考慮すると、とりあえず、異議申立を行って、負けた場合は無効審判を検討するのがいいと思います。