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帝国重工は佃製作所の許諾なく、水素バルブシステムを使用できるのではないか?

2015.11.05

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下町ロケット – Wikipedia
下町ロケットでは、帝国重工が水素バルブシステムの特許出願をする2週間前に、佃製作所が同様の内容について出願しており、
その内容について、特許が成立してしまったので、帝国重工は佃製作所の許諾なくして、新型水素バルブシステムを使用できないということがストーリーの重要な柱となっています。
帝国重工は、本当に、佃製作所の許諾なく、水素バルブシステムを使用できないのでしょうか?
特許法では、先使用権を有するものは、特許権者の許諾なく、特許発明を実施することができると規定されています。
そして、先使用権は、以下のように規定されています。


(先使用による通常実施権)
第七十九条  特許出願に係る発明の内容を知らないで自らその発明をし、又は特許出願に係る発明の内容を知らないでその発明をした者から知得して、特許出願の際現に日本国内においてその発明の実施である事業をしている者又はその事業の準備をしている者は、その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において、その特許出願に係る特許権について通常実施権を有する。


帝国重工は、ロケット開発の一貫として、水素バルブシステムの開発を行っており、佃製作所の出願から二週間後には、同内容の出願を行っている点を考慮すると、帝国重工は実施の準備を行っていたと解釈される可能性は高いと考えられます。
もちろん、特許出願=「実施の準備」ではないので、帝国重工の特許出願時の状況が「実施の準備」に該当しない可能性もあります。「実施の準備」については、以下のガイドラインで詳細に説明されています。
先使用権制度ガイドライン(事例集)「先使用権制度の円滑な活用に向けて-戦略的なノウハウ管理のために-」について | 経済産業省 特許庁


「法 79 条にいう発明の実施である「事業の準備」とは、特許出願に係る発明の内容を知らないでこれと同じ内容の発明をした者又はこの者から知得した者が、その発明につき、いまだ事業の実施の段階には至らないものの、即時実施の意図を有しており、かつ、その即時実施の意図が客観的に認識される態様、程度において表明されていることを意味すると解するのが相当である」(最高裁昭和 61 年 10 月 3 日第二小法廷判決(No.27-最))。


ドラマなので先使用権の議論は割愛したのだと思いますが、リアリティを出すには、帝国重工の財前には、「先使用権は無いのかぁーー」と叫んで欲しかった気もします。