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独立は不安→半独立という方法もある

2013.07.23

伊藤 寛之

特許事務所の勤務弁理士は、ある程度、給与と地位が安定しており、3000万程度の売上を上げることができる腕がいい弁理士の場合は、それなりの高額の報酬を得ている場合があると思います。
その一方で、自分が上げている売上に対して給与の額が見合っていないという不満を感じたり、家庭の事情を考慮して自由な働き方ができないなどという不満を感じて独立を考える人も多いと思います。
私自身、以前の事務所ではそれなりにいい待遇をして頂きましたし、有給を比較的自由に取得させてもらったりして、快適に働かさせてもらいましたが、自分が上げている売上と給与を比較すると、もうちょっとくれてもいいのになぁーという思いを持ったり、自分が取ってきた仕事を休みを使って処理したのに給与にほとんど全く反映されず、やる気を無くしたりしたこともありました。
独立して新しい事務所を作れば、頑張った分だけ報酬が増えるし、自由な働き方ができるというメリットがある反面、報酬に関しては、クライアントを獲得できなければ経費の分だけマイナスになるし、事務・経理・営業等の様々な仕事をする必要があって、明細書作成等の実務に集中できないというデメリットもあります。
弊所は、勤務弁理士のデメリットと、独立弁理士のデメリットを無くす勤務形態を提案しています。
1.完全歩合制
 弊所では完全歩合制であり、独立して案件を処理できる弁理士には売上の50%を支払います。
また、国内新規出願で図面等から明細書を書き起こす案件については、さらに多くのプレミアム歩合を支払います。
従って、このような場合には、新規出願明細書に対する報酬は、売上の60%を超えることもあります。
 事務所を自分で運営すると、オフィス機能・事務機能を維持するためにかなりの費用がかかりますので、この水準の報酬であれば、少なくとも一人事務所を営業する場合と少なくとも同程度の報酬になるはずです。
 もちろん、完全歩合なので、自分が売上を上げなければ、報酬は0になります。これは独立した場合と同じですが、独立した場合は、経費分だけマイナスになるのに対して、弊所では0にしかなりません。
 弊所は、現在は多くのお仕事を頂いていますが、今後は全く分かりません。事務所に入ってきた仕事は適宜配分しますが、仕事を獲得する一次的な責任は所員にあります。この点は独立した場合と同じですが、事務所にすでに1万件以上の受任案件がある分だけ、中間処理等がありますので、仕事が途切れる可能性は独立した場合に比べてはるかに小さくなります。
2.事情を考慮した勤務体系
 事務所に来て仕事をするのが基本ですが、子供が生まれたばかりで家から離れることが難しい等の事情がある場合には、在宅で勤務をすることを認める等、各人の事情を考慮して勤務体系を柔軟に認めています(このような勤務体系を可能にするために、VPNを導入するなどの方法で安全な通信を確立しています)。また、自分が担当する案件で期限が近いものがなければ、休暇を取得することは基本的に自由です。完全歩合制なので、休んだ分については、当然、報酬は発生しません。例えば、今週は、旅行に行きたいので、土曜日・日曜日に働いて、月曜日・火曜日に休みを取得するということも可能です。
3.オフィス機能・事務機能の提供
 独立すると、オフィス探し、データベースの整備、各種書類の雛形作成等、税務処理など、莫大な事務作業が必要になります。オフィスの設備費(机、PC、プリンタ、冷蔵庫など)、オフィス賃料、データベース購入費用、税理士報酬などの経費が莫大にかかり、初年度の収支が赤字になることは珍しくありません。
 データベースは、データ入力の信頼性が極めて重要ですが、一人で入力すると、一定の確立でミスが発生し、事故原因になります。
 このようなオフィス機能・事務機能を整備することが大変であることが、独立が大変な理由の一つですが、弊所は、これらの機能を提供します。
4.クライアントと自由にコンタクト
 事務所によってはアソシエイトがクライアントと自由にコンタクトを取ることを禁止しているところがあります。これを許すとアソシエイトがクライアントと仲良くなって、クライアントを連れて独立してしまう恐れがあるからです。弊所では、アソシエイトがクライアントと自由にコンタクトを取ることをむしろ推奨しています。アソシエイトがクライアントと仲良くなって関係を深めることは事務所にとってプラスであると考えるからです。
 もちろん、アソシエイトがクライアントを連れて独立するというリスクは当然存在していますが、弊所の方針としては、独立した場合と得られる報酬をできるだけ一致させることによって、独立するよりも弊所に在籍することを選んでもらえればと考えています。
5.自由に営業
 所員が営業することを快く思わない事務所もありますが、弊所では、所員が自分で営業をして、自分自身の顧客を獲得することを推奨しています。自分でたくさんクライアントを獲得して、将来の独立に備えることも自由です。弊所としては、弊所で長く働いて欲しいと考えていますが、十分な実力とクライアントを持った所員が、弊所では満足できずに独立することを止めることはできません。
6.まとめ
 以上のように、弊所では、完全歩合制を採用することによって独立した場合に類似した報酬になるようにし、かつオフィス機能・事務機能を提供することによって、独立した場合の大変さを緩和しています。
 いきなり独立をすることは、厳しいと考えていても、弊所で「半独立」をすることを考えては如何でしょうか?「独立」には、自分のクライアント・経理の知識・事務の知識・外国代理人とのネットワーク・営業ノウハウ等様々なスキルが必要になります。弊所はこじんまりとしていますので、これらの独立に必要なスキルを学ぶことができます。そして、弊所での「半独立」に我慢ができなくて、「独立」をしたい場合には、弊所には止めることができません。

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