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外国出願の一元的対応

2012.10.11

伊藤 寛之

最近は、各国のOAは、段々と均質化の方向に向かっています。
例えば、中国からのOAは、EESRの内容にそっくりなものが頻繁にあります。引用文献の内容も拒絶理由の論旨もそっくりなので、EESRをほとんどそのまま流用しているのが分かります。
外国出願の中間処理では、
(1)現地代理人に最初にレビューをさせ、国内代理人が現地案をレビューしてクライアントに報告する方法
(2)現地代理人には単に書面を送ってもらって、国内代理人が応答案を考えてクライアントに報告する方法
(3)クライアントが最初にレビューをする方法
があります。
現地代理人が現地の実務に最も詳しいので、その観点からは(1)が最適です。しかし、(1)の方法の場合、重複検討が発生してしまうという問題があります。例えばEPとCNで実質的に同じ内容のOAが出た場合、EPとCNの代理人は、お互いの応答案を見ず、自分のところのOAの内容のみを見て、応答案を検討します。応答案の内容は、だいたい同じになることもあれば、ずれることもあります。
次に、日本の代理人が現地応答案を見た上でクライアントに報告する応答案を検討しますが、EPとCNの代理人からの応答案の内容がずれていると、その分だけ検討時間が増える傾向にあります。そのため、EPとCNで現地代理人費用が多くかかることに加えて、日本代理人費用も高くなる傾向にあります。
次に、クライアントで日本の代理人の応答案を検討します。日本の代理人がEPとCNのOAの内容の共通点・差異点をきちんと整理すればいいのですが、そうでない場合には、クライアントの側での検討時間も増えてしまいます。
このような無駄な検討を最小限にするために、弊所では、(2)の方法で中間処理を行うことが薦めています。
この方法では、現地代理人は、最初に、書類を転送するだけです。
次に、弊所で、各国のOAの内容と、今回のOAの内容を比較した上で、応答案を検討します。引例や論旨が類似していると検討を比較的早く終わらせることができます。
次に、クライアントは、弊所の応答案を検討します。弊所の応答案には、他国のOAの応答状況も含めます。例えば、「EPでは、このように補正を行って応答を行いました。今回のOAは、引例自体は異なりますが、実質的な開示内容は共通しており、EPと同様の内容で応答することができると思います」といった感じなります。そうすると、クライアントは、EPの応答時に詳細な検討を行なっていますので、今回のOAの応答方針についても検討時間を短縮することができます。
そして、クライアントから応答方針をもらった後、現地に連絡して、応答方針を伝えて、応答書面を作成してもらいます。その応答書面を最後に弊所でチェックして、弊所の応答方針が反映されているかどうかを確認した上で、特許庁に提出してもらいます。
この方法の欠点は、現地の細かい実務が必須の場合に対応が難しいことです。そこで、弊所での検討を行なっている際に、記載不備などの現地の知恵が必要なときはその点を現地に通知し、また、拒絶理由の内容が不明確な場合には、審査官に電話をしてもらうなどを行って、現地と連絡を取って、必要な対応をしてもらいます。
例えば、進歩性の基準は、少なくとも数年前までは日本が世界で一番厳しかったと思います。日本の弁理士は、そのような厳しい基準の下で、どうにかして特許にしようと知恵を絞ってきましたので、進歩性欠如の拒絶理由の応答方針の作成については、現地の代理人よりも優れている場合が多いと思います。
例えば、米国では、数年前のKSR事件までは、非自明性違反の拒絶理由を構成するための基準が高すぎて、構成にわずかでも違いがあれば特許になることが多くありました。そのころ、日本では明確な阻害要因が無い限り、全部「設計事項」で拒絶されていました。従って、日本の弁理士は、進歩性については、他国の弁理士とは鍛え方が違うと思います(もちろん、米国にも優秀は弁護士はたくさんいます。ひどいのもたくさんいますが)。
現地代理人が得意な部分は現地代理人にまかせて、日本の代理人がすべきことは日本の代理人が行うことがによって、中間処理コストを低減しつつ、かつクライアントの手間も削減でき、世界中で一元的な対応ができますので、特許になった後の管理も楽になります。

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