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【SKIPの知財教室(IP Hack ®)】じっくりヒストリー ダンヒルライターの発明家 アルフレッド・ダンヒル(イギリスの有名なファッションブランド「ダンヒル」の創業者)

2023.06.19

AKI

私たちの身の回りには非常に多くの画期的なモノや手法であふれています。これらはすべて先人たちのアイデアによって実用化された数多くの発明のおかげです。ブランド品は身につける人の価値と品位を高めるアイテムとして、多くの人に愛されています。現代でいうと香水やバッグなどがイメージしやすいのではないでしょうか。イギリスの有名なファッションブランド「ダンヒル」も、紳士服やアクセサリー、タバコなどの商品を開発していることで知られています。このダンヒルを創業したのが、イギリスの実業家・アルフレッド・ダンヒルです。彼は父親から受け継いだ家業を自身の名を冠するものに変更し、様々な事業で成功を収めました。特にブランド品市場の開拓は、現代にもつながる一大商業の革命だったと言えるでしょう。今回はそんな、アルフレッド・ダンヒルの生涯を振り返っていきましょう。

アルフレッド・ダンヒルの前半生(自動車グッズの会社を経営してタバコ関連の発明をする)

アルフレッド・ダンヒルは、1872年にイングランドのミドルサックスで生まれました。18歳のとき、割引自動車会社を設立し、その傍ら通信販売でアクセサリーを販売していました。父親の家業はモーターアクセサリーを販売する会社で、馬具専門の製造卸売業を営んでいました。ダンヒルは21歳のときに父親から家業を受け継ぐと、会社の名前を自身の名である「アルフレッド・ダンヒル」に変更します。時代は産業革命のさなか、人々の乗り物は馬車から車へと移り変わっていきました。馬具の販売ではもう生き残れないと感じ取ったダンヒルは、自動車関連のグッズ販売に舵を切る戦略を立てました。1902年にはメイフェアにショップを開き、ますます事業は調子を伸ばしていくことに。それから2年後の1904年、大ヒット商品の「ウィンドシールドパイプ」を発明します。これは運転中の喫煙でも灰や火の粉が飛ばないように風防をつけたパイプで、消費者のニーズにぴったりとはまりました。その後はロンドンで「タバコ・スペシャリスト」というショップを開業します。一般品よりも高価なタバコや婦人用に開発されたシガレットホルダーなど、先鋭的なスタイルのタバコ事業が大きな話題を呼びました。特に、パイプとフィルター付きの紙巻きタバコはエース商品として、ダンヒルに多大な利益をもたらしました。1924年に売り出したダンヒルライターは、高級品として有名でしたが、着火性や耐久性などの機能面がすばらしく、多くの人に愛される商品となりました。

アルフレッド・ダンヒルの後半生(タバコ事業を高級ブランド事業に拡張)

これを機にパイプ製造事業に参入したダンヒルは、勢いそのまま、セントジェームズにタバコの専門店を開きます。ここではオーダーメイドのタバコブレンドを提供していました。最初に開いたショップは、デュークストリートに構えた小さなものでした。客に合わせたオリジナルのタバコを提供し、少しずつ人気を獲得していきました。1908年、最初のダンヒルタバコを導入すると、ショップは急速に繁栄。オーダーメイドのタバコ事業を思いつくのもさることながら、営業の才能も類いまれなものがあったようです。1912年、ダンヒルはパイプにホワイトスポットの商標を導入しました。同年、ダンヒルの弟であるハーバードや長男アルフレッド、1913年には次男のヴァーノンが事業に加わりました。

ブランド品の市場に関わり始めたのは、1920年代のこと。このころダンヒルは、ニューヨークとパリにショップをオープンしていました。世界のことにも興味があったダンヒルは、富裕層向けの商品についても熱心に調べていました。ブランド品市場に可能性を見出していたダンヒルは、世界でブランド品市場が創造されるように、惜しみない支援を送っていました。

事業が順調に伸びている一方で、ダンヒルの家庭状況はよくありませんでした。気難しい性格のダンヒルは、それが原因で家族との対立を深めることに。結局は妻と離婚し、その後愛人と再婚することになります。家庭を顧みずに過ごしたダンヒルは、しかし事業でなおも成功し続けます。1926年に乗り出した化粧品事業では娘のメアリーを経営者に据え、自社の化粧品を販売し始めます。立ち上げた時点では好調でしたが、1927年の世界大恐慌の影響をもろに受け、甚大な被害を受けました。

1928年、ダンヒルは現役を引退。息子のアルフレッド・ヘンリーに会長の座を渡したあと、自身は家を出てしまいます。1959年に亡くなり、その波乱万丈な人生に終止符を打ちました。1976年にアルフレッド・ダンヒルはリシュモングループに買収されましたが、紳士服を中心としたブランドとして、現代でも世界で注目を浴び続けています。

今回はイギリスの実業であるアルフレッド・ダンヒルの生涯を振り返りました。ブランド品市場で多大な成功を収めた反面、家庭の不和で家を出ることになってしまうという、まさに波乱万丈な人生でした。彼が立ち上げたブランドが現代でも名を残していること、それ自体は素晴らしいですが、家族も大事にすべきだったという教訓も見えてくる話でした。ブランド品に興味がある方は、ダンヒルの商品を見てみるのも面白いかもしれませんよ。

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