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【SKIPの知財教室(IP Hack ®)】じっくり茶飲み話 その特許出願ちょっと待った!(知財コストの約100倍の粗利の増加(または減少抑制)が見込めますか?)

2023.05.15

AKI

研究者やエンジニアの皆さん、苦労の末にようやく素晴らしい発明が完成したぞ!よーし、特許事務所に相談して特許出願だ!と盛り上がっているところ、水を差すようで恐縮ですが、その特許出願ちょっとまってください。

果たして、その特許出願をしたところで、知財コストの約100倍の粗利の増加(または減少抑制)が見込めますか?

SKIPでは、クライアントに対して、知財コストの約100倍の粗利の増加(または減少抑制)という成果が見込めないのでなければ、特許出願を思いとどまっていただくようにアドバイスを差し上げています。

例えば、日米欧中韓台で特許出願から権利化までに約600万円の直接コスト(+知財部の人件費を加えると約1000万円のトータルコスト)がかかるのであれば、その特許出願によって、約10億円の粗利の増加(または減少抑制)の効果がなければ、元が取れていないと考えていただきたいわけです。

なぜなら、特許出願のメイン顧客である製造業の場合、売上に対して、研究開発費が5%程度、研究開発費に対して知財コスト(知財部の人件費を含む)は約5%程度であり、粗利益率は25%程度なので、知財コストの約100倍の粗利の増加(または減少抑制)が見込めなければ元が取れないという計算ですね。。。

そのため、SKIPでは、少し、極端ではありますが、知財コストの約100倍の粗利の増加(または減少抑制)という成果が得られないと想定される場合には、特許出願をすべきではないかもしれないですね?とアドバイスを差し上げています。

それでも、クライアントが、どうしても特許出願をされたいという場合にはきちんと、SKIPでは、クライアント企業の事業戦略をヒアリングして、その特許出願をすることによって、知財コストの約100倍の粗利の増加(または減少抑制)を確保するための知財戦略を一緒になって検討した上で、特許出願を受任させていただくようにしております。もちろん、特許出願のコストダウンも重要ではありますが、それ以上に、その特許出願によって、どれだけの粗利の増加(または減少抑制)を確保することができるか?の方が重要ですね。

もっとも、このように、知財戦略のアドバイス+特許出願の実務を同時に提供するのは、なかなか大変です。なぜなら、そのようなアドバイスをするには、弁理士として一人前になるために必要な、科学技術知識+語学力+法律知識にくわえて、さらに、ビジネスの知識まで必要になってくるためです。

例えば、理系修士または博士を取って、研究開発を数年やって、弁理士試験に受かるまでに、35歳くらいになっちゃいます。そして、さらに、そこから、知財実務を数年やって腕を磨いて、欧米中韓台+新興国の特許法もマスターして、英語&中国語もペラペラになるまで語学力を磨くと、40-45歳くらいになっちゃうと思います。そこから、さらに、独学または夜間のオンラインのビジネススクールなどでMOTまたはMBAをとって、経営ノウハウもマスターしてとなると、50歳くらいになっちゃうかもしれないですね。

そこまで勉強せんとアカンのかーい!と絶望しそうになるのですが、そうなのです。弁理士として、本当にクライアントのお役に立とうと思えば、そこまで勉強せんとアカンのです。本来なら、どの特許事務所であっても、これくらいのスペックの弁理士が、知財コンサルとセットで、特許出願の権利化をするのがよいのでしょうね。そうすれば、知財コストの約100倍の粗利の増加(または減少抑制)が実現できるんじゃないかと思います。

所詮は、特許業界というのは、製造業(+IT産業+建設土木業+その他の科学技術を利用する産業)の生み出す粗利の1%程度をもらって飯を食っているのが実態ですので、クライアントの生み出す粗利を増やさないことには、当然に、特許業界が儲かるようになるはずはないですね。

逆に、日本の製造業(+IT産業+建設土木業+その他の科学技術を利用する産業)の生み出す粗利が2倍になり、日本の弁理士の総数が変わらなければ、弁理士一人あたりの粗利益も2倍になりますね。

特許業界が、例えば、政治家などを通じてロビー活動をして、製造業(+IT産業+建設土木業+その他の科学技術を利用する産業)の生み出す粗利を増やさずに、その粗利の1%→2%に特許業界の取り分を増やしたとしても、いわば、寄生虫が宿主を食い殺すようなもので、逆効果だと思いますね。

やはり、弁理士は、産業界の寄生虫になるのではなく、ヤクルト?の回し者ではありませんが、ラクトバチルス・カゼイ・シロタ株(ヤクルト菌)みたいな腸内共生細菌のような形で、宿主である産業界の健康を増進することによって、自分の取り分を増やすべきだと思います。

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