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【SKIPの知財教室(IP Hack ®)】じっくり®ヒストリー 「ふうせん宇宙旅行」の発明家 岩谷圭介(風船にカメラを取り付けて飛ばし、宇宙の様子を撮影する取り組みを行っている面白い発明家)

じっくりヒストリー IP HACK

2025.11.04

AKI

私たちの身の回りには非常に多くの画期的なモノや手法であふれています。これらはすべて先人たちのアイデアによって実用化された数多くの発明のおかげです。風船にカメラを取り付けて飛ばし、宇宙の様子を撮影するという取り組みは2011年から始まりました。この取り組みは「ふうせん宇宙旅行」と名付けられ、2012年に初めて上空30kmから宇宙撮影に成功しました。自分が飛行機や気球に乗らなくても、空から撮影することで宇宙旅行を楽しめる可能性に、大きな期待が寄せられています。「ふうせん宇宙旅行」の取り組みを始めたのは、福島出身のエンジニアで株式会社岩谷技研の代表取締役を務める岩谷圭介です。彼は大学時代、海外で風船にカメラをつけて飛ばしたというニュース記事を見て、風船カメラで宇宙撮影を試みる挑戦を行い始めました。今回はそんな岩谷圭介の生涯を振り返っていきましょう。

岩谷圭介の前半生(北海道大学の学生をしながら「ふうせん宇宙旅行」の活動をはじめる)

岩谷圭介は1986年、福島県郡山市で生まれました。その後東京都に移住し、以来東京で育ちました。高校卒業後、北海道大学工学部機械知能工学科に進学。大学在学中、岩谷はとあるニュース記事を目にします。それは、風船にカメラを取り付けて飛ばし、空の様子を撮影したというものでした。そのシンプルなのに意外な発想が注目され、岩谷も大きく影響を受けました。「自分もやってみよう」、そう思い立った岩谷は風船カメラで宇宙を撮影する試みを始めました。

最初はインターネットを探したり、書籍を読み漁ったりして風船カメラについての情報を探しました。しかし同じような活動をしている人はほとんどおらず、論文も見つからなかったため、十分な情報を得ることはできませんでした。さらに当時、岩谷は苦学生で、機体を購入する資金にも悩んでいました。100円ショップやホームセンターなどで手に入る安い素材を使って機体を制作しました。2012年、ついに小型カメラで上空30kmからの撮影に成功しました。この取り組みを「ふうせん宇宙旅行」と名付けて、子ども向けに著書などで発信活動を行っています。

岩谷は写真を撮影するだけでなく、風船を回収することに重きをおいていました。当初、風船が落下する地点を予測することができず、風船を見失ってしまうことも少なくなかったのです。自然科学について研究・分析をすることで風船の落下地点を正確に予測できるようになり、そのことが業界内で話題を呼び、岩谷のもとにCMや番組制作などの仕事が舞い込むようになります。100%に近い回収率から失敗する可能性も低く、競合他社や大学を常にリードする状況で事業を行うことができたことで、岩谷に多くの仕事の依頼が訪れました。

岩谷圭介の後半生(岩谷技研を創業して高度20kmを超える風船(気球)有人飛行に成功する)

2016年、岩谷はさらなる事業拡大のために岩谷技研を設立しました。彼は個人事業主のまま活動を続けることも検討していましたが、大手の事業者から声がかかったことや、個人よりも会社として動いた方が取引や資金の面を有利に進められることから法人化することを決めたのです。会社を立ち上げた後、岩谷技研にはCMや番組撮影の依頼にとどまらず、宇宙ステーションの設備や人工衛星に使用するパーツの製作などの仕事も請け負うようになりました。

そしてさらに、岩谷技研は有人遊覧宇宙飛行の実現を目指し始めました。最初は小型カメラから始まった宇宙撮影ですが、装置が大型化していく中で人を乗せて飛ばす可能性が見えてきたのです。ロケットではなく風船(気球)で人が宇宙まで到達する、そのロマンは業界の多くの人々の胸を震わせました。岩谷技研には増資の話が進み、宇宙飛行に成功するために数多くの会社が応援していました。

2023年、ついに気球は高度10km以上に到達し、2024年には高度20kmを超える有人飛行に成功しました。国内初となるこの成功はさまざまなメディアで取り上げられ、話題を呼びました。気球の中の空気を保つために開発した有人宇宙遊覧用気密キャビンの技術で特許を取得し、その後も宇宙や飛行に関するさまざまな発明で多数の特許を取得し続けています。

ふうせん宇宙撮影の活動は全国の教育機関に感動をもたらし、岩谷には企業や学校などから講演の依頼が来るようになりました。彼は「やってみる、から始めよう!」というテーマを掲げ、現在も積極的に講演会を実施しています。

今回は、日本で初めて気球を使った有人宇宙飛行に成功した岩谷圭介の生涯を振り返りました。風船にカメラを取り付けて宇宙の様子を撮影するというアイデアを、思いついても実行できる人は少ないでしょう。有人飛行の成功を成し遂げられたのは、彼の宇宙に対する熱い思いがあってのことでした。今後、宇宙は私たちにとって身近な存在となっていくのかもしれません。いつか気軽に宇宙旅行ができる日が来ることを楽しみにしたいですね。

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