【SKIPの知財教室(IP Hack ®)】じっくり®ヒストリー カタパルト(投石機)の発明者 馬鈞(『三国志』魏志「方技伝」に登場する中国三国時代に魏に仕えた学者・発明家)
2025.08.04

AKI
私たちの身の回りには非常に多くの画期的なモノや手法であふれています。これらはすべて先人たちのアイデアによって実用化された数多くの発明のおかげです。カタパルト(投石機)は、石などを射出して敵を攻撃する兵器です。人や馬などはもちろん、櫓や城などの建物も攻撃対象になります。カタパルトには多くの種類があり、改良されたものはオナガーやトレビュシェットなどと呼ばれています。戦乱の世においては、兵器の強さが戦局をわけることが多々ありました。中国三国時代、魏・呉・蜀の三国が天下統一を目指して激しく戦いました。この時代に、カタパルトの改良に成功したのが魏に仕えた馬鈞です。今回はそんな馬鈞の生涯を振り返っていきましょう。
馬鈞の前半生(機織り機や指南車(方位を特定する車)の発明をして有名になる)
馬鈞は、中国三国時代に魏に仕えた学者・発明家です。『三国志』魏志「方技伝」の中で、彼についての記録が見られます。生没年は不明ですが、彼の功績は残されています。若いころはろくに勉強もせずに遊び呆けていたため、本人も周囲の人間も彼の才能には気づきませんでした。のちに博士(政府の顧問や、専門知識を持つ人物を指す官職名)に任命されますが、馬鈞はあまりにも貧乏であったため、生活費を稼ぐために機織り機の改良をしました。それが評判になり、その才能を周囲に知られることになりました。
評判を上げた馬鈞は給事中となり、高堂隆・秦朗と議論をしました。古記録に登場する指南車(方位を特定する車)の話をした際、高堂隆・秦朗は「指南車など実在しない」と主張しました。それを受けて、馬鈞は指南車は実在したと述べ「今世の人は工夫をしてみようともしない」と批判しました。この議論で、馬鈞は2人からの嘲笑の的となってしまいます。名前や字名を皮肉られて馬鹿にされることもありましたが、馬鈞は意に介さず、「空論を弄ぶよりも、実際に作ってみるべきだ」と主張しました。馬鈞の論を、高堂隆・秦朗は曹叡(明帝)にこのことを上奏して、実際に馬鈞に指南車を作らせようとしました。明帝は馬鈞に指南車の製作を命じ、馬鈞は見事な指南車の完成をもって明帝の期待に応えました。この出来事は瞬く間に国内に広がり、その名前は天下に轟きました。
馬鈞の後半生(諸葛亮孔明が発明した連弩を改良したり、カタパルト(投石機)の改良を行ったりするが、周囲の理解を得られずに終わる)
馬鈞は都に住み、それなりの広さの土地を所有していました。田畑に水を引くため、足踏み式の水車を発明して農作業の効率をあげようとしたところ、通常の水車の100倍の効果が現れました。
ある時、ある人物が明帝のもとに機械人形を献上しました。しかし明帝はその人形の動きに不満を持ち、馬鈞に改良を命じました。馬鈞は見事に人形の改良に成功し、明帝の機嫌を損なうことはありませんでした。この人形は水転百戯と名づけられ、明帝に指南車と共に献上された記録があります。
蜀の軍師、諸葛亮孔明は矢を連射できる連弩という兵器を開発していました。この連弩は魏にも流れてきて、馬鈞の目の前にやってきました。馬鈞は連弩の巧妙さを評価しつつも「まだ改良の余地がある。私が作れば5倍の性能を持たせることができる」と言い張りました。
その後、馬鈞はカタパルトの改良を行いました。古代中国におけるカタパルトはてこの原理を利用して大きな石を相手に投げつけるもので、武器として利用するためには人手が必要でした。その欠点を改善し、少人数で扱えるようにした上で石を連続で投擲できるようにして実験を行ったのです。
この改良式カタパルトについて、政治家の裴秀は馬鈞を批判しました。しかし馬鈞は言い返せず、弁明をすることができませんでした。裴秀が馬鈞を言い負かしたことを周囲に言いふらすと、馬鈞に師事していた傅玄が裴秀に対し「人には得手不得手がある以上、それは意味のないことではないか」と言って馬鈞を庇いました。曹羲もまた裴秀の議論に賛同しますが、傅玄が馬鈞のことを熱心に弁護したため曹羲も納得して、馬鈞の改良案について兄の曹爽に取り成すことを約束しました。しかし、曹爽は馬鈞の案を放置したため、カタパルトの改良は実用化には至りませんでした。
傅玄は馬鈞を回顧して記録を残し、天下に名高い人物と称えました。さらに公輸盤・墨子・王璽・張衡などの人物と匹敵する才能がありながらも周囲の理解を得られず、十分な活躍の場が与えられなかったことを惜しみました。
今回は、中国三国時代に魏で活躍した馬鈞の生涯を振り返りました。発明家としての才覚を持ちながら、環境のために日の目を見ることができませんでした。兵器の発明だけでなく、機織り機や水車の発明など、手元にあるもので生活を豊かにしていく発想が素晴らしいですね。


