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【SKIPの知財教室(IP Hack ®)】じっくり®ヒストリー 磁気点火装置の発明家 ロバート・ボッシュ(世界最大の自動車部品メーカーの「ボッシュ・グループ」の創業者)

2024.03.22

AKI

私たちの身の回りには非常に多くの画期的なモノや手法であふれています。これらはすべて先人たちのアイデアによって実用化された数多くの発明のおかげです。ロバート・ボッシュは、世界的に有名な自動車部品メーカーです。1886年に創業されたこの企業は、革新的な商品の数々を生み出してきました。高い技術を持ち、現在も業界を牽引する立場にあるロバート・ボッシュは、車を愛する多くの人々からの支持を得ています。ロバート・ボッシュ社を創業した人物こそ、社名に名を冠するロバート・ボッシュです。ドイツに生まれたボッシュは高貴な生まれではありませんでしたが、高い教養を受けることができました。そのおかげもあり、優秀なエンジニアとしてのしあがることができたのです。今回はそんな、ロバート・ボッシュの生涯を振り返っていきましょう。

ロバート・ボッシュの生涯(「精巧機械と電気工学の作業所」を立ち上げて磁気点火装置を発明する)

ロバート・ボッシュは、1861年ヴュルテンベルク王国ウルム郊外のアルベックで生まれました。家族は広大な農場と旅館を経営しており、12人の兄弟がいる大所帯でした。父親はフリーメイソンにメンバー入りしており、12人の子どもたちに対する教育も熱心に行っていました。家族の階級は高いわけではなかったものの、実家の経営状況が良好だったおかげで裕福な暮らしを送ることができていました。教養も高く、ボッシュをはじめとした12人の兄弟たちは着実に学力をつけていきました。

1869年、ボッシュはウルムにある中等技術学校に入学します。学内では優秀な成績を収め、才能を発揮しました。5年間その学校で過ごし技術を習得した後、1876年に卒業しました。卒業後まもなく、精密機械の見習い工として就職し、ドイツやアメリカ、イギリスなど各国を転々として働きました。

1886年、ボッシュはシュツットガルトで「精巧機械と電気工学の作業所」を立ち上げました。ロバート・ボッシュ社の前身となる作業所です。創設の翌年、磁気点火装置に施した改良で最初の成功を収めました。この成功で高い評価を獲得し、それからも次々に大きな成功を収め続け、「精巧機械と電気工学の作業所」の評判は広がっていきました。1897年、最初の磁気点火装置を自動車のエンジンに搭載しました。第一次世界大戦の戦闘機にも、ボッシュ製の点火装置が取り付けられています。

ボッシュは、平和主義者の側面も持ち合わせていました。ナチス政権下のドイツにおいて、平和な世界の実現を目指して活動していました。しかしその理想は叶わず、武装化契約を結んで強制労働者の受け入れを余儀なくされました。そのような状況にあっても、ボッシュは平和を諦めませんでした。当時の世界が抱えていた大きな問題のひとつとして、ユダヤ人に対する差別が挙げられます。ドイツ人でありながらユダヤ人を保護しようとしたボッシュは、ヒトラーに抵抗を続けました。

自動車部品製造のかたわら、ボッシュは農業も営みました。ミュンヘンに移住して広大な土地を持ち、農業や狩猟をして生活を送りました。

1942年、ボッシュは天寿を全うしました。

ロバート・ボッシュの跡を継ぐ者たち(世界最大の自動車部品メーカーの「ボッシュ・グループ」として大発展を遂げる)

「精巧機械と電気工学の作業所」は、第一次世界大戦後に日本や中国などアジアにも進出し、世界的な企業としての歩みを進めていきました。ボッシュ社は「ボッシュ・グループ」というグループ企業となり、日本においても「ボッシュ株式会社」が立ち上げられました。近年までに数々の吸収・合併を繰り返す中で、自動車分野以外にも事業の幅を広げています。ボッシュ株式会社はドイツにある本社の日本における現地法人として捉えられることがありますが、一般的な現地法人のイメージとは実際には少し乖離しています。他方、ボッシュ・グループは親会社の統制が強い経営方針・文化であったため、ボッシュ・グループの一員であることと上場企業としての独立性の間でどう立ち回っていくべきか、という課題を抱えていました。しかしこの問題は、ドイツのボッシュ社が2008年に友好的なTOBによる完全子会社化を実施したため解決しました。

今回は、ボッシュ社の設立者であるロバート・ボッシュの生涯を振り返りました。高い技術力を持って世の中に革新を生み出し、数々の製品を生み出した功績は計り知れません。戦時中のドイツで大きな権力に屈せず、多くのユダヤ人たちを救った人間性も讃えるべきでしょう。ボッシュ製のパーツがどの車に使用されているのか知るのも、また面白い発見があると思います。

 

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