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【SKIPの知財教室(IP Hack ®)】じっくり®ヒストリー ベーム式フルートの発明家 テオバルト・ベーム(宮廷管弦楽団の首席奏者をしながらベーム式フルートを発明した天才音楽家)

2024.03.01

AKI

私たちの身の回りには非常に多くの画期的なモノや手法であふれています。これらはすべて先人たちのアイデアによって実用化された数多くの発明のおかげです。楽器にも数々の改良が施され、音楽もより洗練された芸術へと進化してきました。木管楽器の一種であるフルートにも、幾度となく改良が施されてきた歴史があります。今回取り上げるのはその中のひとつ、「ベーム式フルート」です。フルートをはじめとする吹奏楽器には、音の高さを調節するための穴(音孔)が開けられています。ベーム式が登場するまでのフルートは、通常すべての音孔が閉じられており、操作された時のみ開く仕様でした。しかしベーム式では、すべての音孔が最初から開いているという正反対の仕様が施されます。こうすることで、より大きな音を出すことができ、音程の操作も行いやすくなったのです。ベーム式フルートを発明したのは、ドイツの音楽家かつ発明家であったテオバルト・ベームです。今回はそんなテオバルト・ベームの生涯を振り返っていきましょう。

テオバルト・ベームの前半生(宮廷管弦楽団の首席奏者をしながらベーム式フルートを発明する)

テオバルト・ベームは、1794年にバイエルン選帝侯国(後の王国、現バイエルン州)の首都ミュンヘンで産まれました。父親が貴金属の加工業を営んでおり、ベームも父親からその技術を教わりました。この技術を活かして応用して木製のフルートを自作し、18歳の時にはオーケストラに入団できるほどの腕前に至りました。21歳のときには宮廷管弦楽団の首席奏者となり、音楽家としても華々しい経歴を歩んで行きました。

ベームはフルート奏者としての側面を持ちながら、楽器の製作者としても熱心に活動していました。1831年になると、ロンドンで行われたフルート演奏会をきっかけに、フルートの本格的な改良のアイデアを思いつきました。早速改良に取り掛かり、翌年には最初の円錐型ベーム式フルートを完成させました。それまでのフルートは木製で、小さい音孔や8つのキーなどを持つ仕様となっていました。しかしベーム式フルートは大きな音孔を持っているため従来のものより大きな音を出すことができ、音程を変える操作も簡単になったのです。この改良は誰が使っても綺麗な音を出すことにつながり、結果として音楽界全体のレベルを底上げすることにも影響しました。

テオバルト・ベームの後半生(ベーム式フルートの改良を続けて大成功する)

1832年、ベームは新たな円錐形ボアフルートを発表しました。こちらもかなりの評判が上がり、ベームは商業的にも大成功したといえます。それでも彼は満足せず、改良を続けました。ベームは空気の体積を増やすとより強く、よりハッキリとした音が出ることを発見し、ベームは円錐形ボアを円筒形ボアに置き換えました。また、アンブシュアホール近くのボアの放物線状縮小が、楽器の低音域を改善することも発見したのです。さらに音孔が指先で覆うには大き過ぎる時に最適な音が出ることを発見し、孔を覆うためのフィンガープレートのシステムを開発しました。これらの新しいフルートは最初は銀製であったものの、ベームは後に木製版も製作しました。

円筒形のベーム式フルートは1847年に発表され、19世紀後半にはヨーロッパだけでなく世界中のプロおよびアマチュア奏者に徐々に普及していきました。管弦楽や室内楽、 オペラおよび演劇、吹奏楽など広いジャンルでの演奏に採用されました。

さらに多くの改良が成され、今日のフルートでは数え切れないほどの設計の違いがベーム式の大きな特徴です。ベーム式の構想は、ピッコロ、アルトフルート、バスフルートなどの利用可能な様々なフルートを始めとして、他の管楽器にも応用されています。

今回は、ベーム式フルートを発明した発明家・テオバルト・ベームの生涯を振り返りました。音楽家としての才能を持ちながら、楽器の製造・改良にも類まれな才能を発揮したベームの生涯はまさに偉大です。さまざまな音楽のジャンルで活用され、現代でも広く愛されているベーム式フルートは、音楽の世界には欠かせない楽器となっています。芸術分野の歴史を紐解いてみるのもまた違った発見があり、新鮮です。あなたの興味のある物事や趣味などの歴史をのぞいてみると、また面白い歴史に出会えるかもしれませんね。

 

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