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【SKIPの知財教室(IP Hack ®)】じっくり®ヒストリー ディーゼルエンジンの発明家 ルドルフ・ディーゼル(ディーゼルエンジンを発明して特許を取るが謎の失踪を遂げた悲劇の発明家)

2023.11.27

AKI

私たちの身の回りには非常に多くの画期的なモノや手法であふれてい

ます。これらはすべて先人たちのアイデアによって実用化された数多くの発明のおかげです。大型車や船舶など大きい機体を動かすときは、ディーゼルエンジンがよく使用されています。単体で利用できる熱機関の中ではもっとも熱効率が高く、大きなエネルギーを得られることが特徴です。このディーゼルエンジンを発明したのが、ドイツの技術者であるルドルフ・ディーゼルです。今回はそんなルドルフ・ディーゼルの生涯を振り返っていきましょう。

ルドルフ・ディーゼルの前半生(トップの成績でミュンヘン工科大学を卒業してリンデの工場長になる)

ルドルフ・ディーゼルは、1858年パリで生まれました。両親はドイツ人ですが、バイエルンからの移民としてパリで暮らしていました。兄と弟とともに幼少期を過ごし、革製品の製造を営む一家で商売を学んでいきました。

1870年、普仏戦争が始まると、ディーゼル一家はフランスからの退去を余儀なくされました。ドイツには戻らず、イギリスのロンドンに移住することになりました。ルドルフは当時12歳であり、ドイツ語を学ぶためにアウクスブルクの親戚のもとへと送られました。叔父は職業訓練学校で数学の教師をしていたので、ルドルフはそこに入学して教育を受けることになります。

ルドルフは学校教育を受ける中、技術者になりたいという夢を持ち始めました。14歳の時には両親にその旨を記載した手紙を送り、1873年にはトップの成績で学校を卒業しました。アウクスブルクには新設の工業学校があったためそこに進学して技術を学んでいきました。両親は卒業後に就職してくれることを願っていましたが、優秀な成績を残したルドルフにはミュンヘン工科学校からの奨学金が送られ、彼は同校に進学することを決めました。

ミュンヘン工科大学でもかなりの成績を残したルドルフは問題なく卒業できるかと思われましたが、腸チフスにかかったために留年しました。卒業試験は翌年でしたが、実施を待つ間にスイスのスルザーで技術者として実地経験を積みました。試験は無事に終わり、こちらもトップの成績で卒業。その後はパリに戻り、学生時代に教わっていたカール・フォン・リンデ教授の助手として冷凍・製氷工場の設計を行いました。この工場は教授の名前を取って「リンデ」と名付けられ、一大グループ企業として成長していきます。創設の翌年、ディーゼルは工場長となって切り盛りするようになります。

ルドルフ・ディーゼルの後半生(ディーゼルエンジンを発明して特許を取るが謎の失踪を遂げる)

ディーゼルは1883年に結婚し、その後もリンデで働き続けました。リンデでは研究開発部門の重役としての待遇を受け、様々な研究を行っていきました。冷凍や冷蔵の分野が主でしたが、それ以外の分野についても研究を進めていきました。特にディーゼルの発明で有名なのは、熱効率と燃費の研究です。やがてアンモニアの蒸気を使った蒸気機関を発明し、より効率的にエネルギーを得る仕組みを作り上げました。しかしこの蒸気機関は試験運転中に慮外の暴発を起こし、ディーゼルは生死の間を彷徨いながら何ヶ月も入院しました。一命は取り留めたものの、視力をはじめとする健康状態に問題を抱えるようになりました。

その後内燃機関を設計を始め、ついにディーゼルエンジンの発明へと至りました。1893年にはディーゼルエンジンの特許を取得し、新しい熱機関として大きな需要を作り出しました。

1893年から1897年までは、アウクスブルクのマンAGの重役からそのアイデアを発展させる機会を作ってもらいました。発明の当初は「オイル・エンジン」と呼ばれていましたが、発明者の名前にちなんで「ディーゼル・エンジン」と呼ばれるようになり、この呼び方が定着しました。ディーゼルエンジンの原料は石油や重油など、他の材料に比べて安価であり、さらに熱効率の高さから様々な分野で使われるようになり、やがて世界中で利用されるようになりました。

ディーゼルは大きな栄光を手にしましたが、その最期は謎に包まれています。1913年、ロンドンに向かうために蒸気船に乗り込んでいましたが、ある朝から彼の姿はなくなりました。腕時計や帽子などは船内に残されたまま、謎の失踪を遂げたのです。10日後、オランダの船がノルウェーの洋上に浮かんでいる死体を発見しました。腐敗が酷く、身元のわからない遺体でしたが、ピルケースや財布、IDカードなどの所持品から、遺体はルドルフであることがわかりました。

今回はディーゼルエンジンの発明者であるルドルフ・ディーゼルの生涯を振り返りました。彼は工業系の知識に興味を持ち、優秀な頭脳を持ち合わせる人物でした。熱効率の研究の成果として発明されたディーゼルエンジンは、様々な改良が加えられ、現在では欠かせない機関となっています。普段見えないところにある機関に目を向け、その歴史を辿ってみるのも面白いですね。

 

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