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【法改正】2023年4月1日施行予定(特許庁に電話で確認済み)権利回復の要件緩和(「相当な注意基準」から「故意でない基準」へ変更)

2022.04.19

SKIP

特許権等の権利回復の要件の変更

令和3年の特許法改正により、PLT(特許法条約)における権利等の回復のための要件を「相当な注意基準」から「故意でない基準」に転換し、特許法等において、手続期間を徒過した場合に救済を認める要件について、「(手続をすることができなかったことについて)正当な理由がある」から「(手続をしなかったことが)故意によるものでない」に改めることとされました。そのため、これまでは救済されなかった、企業知財部での期間管理ソフトの入力ミス等の人為的ミスや、特許事務所内での期限管理の運用の瑕疵等の手続管理上のミスに起因する期限徒過などについても、新たに救済されることになります。企業知財部や特許事務所のみなさんにとっては、これで枕を高くして安心して眠れる、念願の法改正ということになると思います。

この法改正の施行日はいつなのか?

この法改正は、2021年5月14日に可決・成立し、5月21日に公布されました。そして、施行期日については、公布日から2年以内の政令で定める日とされました。
しかしながら、肝心の政令での施行期日の発表がまだ正式になされていないため、いったいいつから施行されるのか?ということが問題になっておりました。
そこで、SKIPの方で、特許庁に問い合わせをしてみたところ、【2023年4月1日】からの施行を予定していると教えてもらいました。

すなわち、未だに、権利等の回復のための要件は「相当な注意基準」から「故意でない基準」に転換されていませんので、みなさんご注意ください。
企業知財部での期間管理ソフトの入力ミス等の人為的ミスや、特許事務所内での期限管理の運用の瑕疵等の手続管理上のミスに起因する期限徒過などは、まだ救済されない可能性が高いので起こさないように十分に慎重に手続きを行うようになさってくださいね。

たとえ「故意でない基準」で救済されても、大きなお金がかかります

もっとも、本改正により、権利等の回復は容易となりますが、制度の濫用を防ぐとともに、手続期間の遵守についてはこれを引き続き促進する必要があることから、それに十分な程度の回復手数料を徴収することとなっています。その金額の水準は、消滅した権利を出願して再取得すると擬制した場合に特許庁に納付すべき金額(出願から権利化までに要する平均的な手数料額)に相当
するものとされています。そのため、権利等の回復にはかなり大きなお金がかかりますので、やはり、きちんと手続期間は守りたいものですね。

新しく「故意でない基準」で救済される手続き一覧

なお、この制度改正によって、「故意でない基準」で救済されることになる手続きは以下のとおりです。

[特許法による手続]
① 外国語書面出願の翻訳文(第36条の2第6項)
② 特許出願等に基づく優先権主張(第41条第1項第1号)
③ パリ条約の例による優先権主張(第43条の2第1項)
④ 出願審査の請求(第48条の3第5項)
⑤ 特許料の追納による特許権の回復(第112条の2第1項)
⑥ 外国語でされた国際特許出願の翻訳文(第184条の4第4項)
⑦ 在外者の特許管理人の特例(第184条の11第6項)

[実用新案法による手続]
⑧ 実用新案登録出願等に基づく優先権主張(第8条第1項第1号)
⑨ パリ条約の例による優先権主張(第11条第1項で準用する特許法第
43条の2第1項)
⑩ 登録料の追納による実用新案権の回復(第33条の2第1項)
⑪ 外国語でされた国際実用新案登録出願の翻訳文(第48条の4第4項)
⑫ 在外者の実用新案管理人の特例(第48条の15第2項で準用する特許
法第184条の11第6項)

[意匠法による手続]
⑬ パリ条約の例による優先権主張(第15条第1項で準用する特許法第
43条の2第1項)
⑭ 登録料の追納による意匠権の回復(第44条の2第1項)

[商標法による手続]
⑮ 商標権の回復(第21条第1項)
⑯ 後期分割登録料等の追納による商標権の回復(第41条の3第1項)
⑰ 防護標章登録に基づく権利の存続期間の更新登録(第65条の3第3
項)
⑱ 書換登録の申請(附則第3条第3項)

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