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【SKIPの知財教室(IP Hack ®)】じっくり®法解説 Claim #19 ライフサイエンス特有の審査基準と判断のポイントを整理

じっくり法解説 バイオ・医薬 IP HACK 特許

2025.08.07

SKIP

ライフサイエンス特有の審査基準と判断のポイントを整理

ライフサイエンス分野では、医薬品、バイオテクノロジー、遺伝子工学、診断機器など、多岐にわたる革新的な発明が生まれています。しかし、人間の生命や健康に直接関わる技術を特許として保護する際には、通常の技術分野とは異なる観点での審査が行われます。特に「人間を手術・治療・診断する方法」のように、産業としての適格性が問われるケースでは、特許の可否が非常に慎重に判断されます。

本記事では、特許・実用新案審査基準や審査ハンドブックを参照しながら、ライフサイエンス分野における代表的な審査ポイントや、発明の類型ごとの扱いについてわかりやすく解説します。

特許になる発明とは

特許法において、特許を受けることができる発明とは、①特許法上の「発明」(法第2条第1項)に該当し、②産業上の利用が可能(法第29条第1項柱書)であり、③新規性や進歩性(第29条第1項・第2項)などの諸要件を満たすものです。

ライフサイエンス分野では、以下のような判断が重要です。

  • 「人間を手術、治療又は診断する方法」に該当するか
  • 請求項が「物」なのか「方法」なのかの明確な区別
  • 明細書や実施例が、実施可能要件やサポート要件を充足しているか

明細書と請求項の記載における注意点

ライフサイエンス分野の特許出願では、明細書における「実施可能性」と「発明の明確性」が特に重要です。例えば、医薬の用途発明であれば、有効性を示すデータ(動物試験や細胞試験など)の記載が不可欠です。また、請求項には効果を直接表すような用語(例:「治療するための」など)ではなく、客観的な構造や機能に基づく表現が求められます。

審査基準における「産業上の利用可能性」

日本の特許法では、「人間を手術、治療または診断する方法」は、産業上利用できない発明として特許の対象外とされます。これは、医療行為を行う医師の活動を特許で制限しないようにするための配慮です。

一方、医薬品や医療機器そのもの、あるいはそれらの製造方法については、「物」の発明として特許が認められる可能性があります。

医療機器に関する発明の扱い

医療機器の発明においては、機器そのものや、人体への作用を含まない「作動方法」は特許の対象となります。

たとえば、MRI装置の構造やプログラム、センサの配置方法などが該当します。一方で、「医師が操作して患者に治療を施す工程」や「装置が自動で人体に切開を行う工程」が含まれると、「人間の治療方法」に該当し、特許の対象外となります。

人体からの資料採取・分析方法の線引き

近年増加している遺伝子検査や画像診断技術に関しても、「診断結果の判断工程」が含まれる場合は、診断方法として特許が認められない可能性があります。

一方で、単にデータを採取し分析するだけの技術(例:X線撮影装置による画像取得、体温計の測定工程など)であれば、特許の対象として認められます。

医薬・ベクター・細胞製剤に関する特許の可否

以下のような発明は、特許として認められる可能性があります。

  • 医薬の製造方法(例:ベクター導入による組換え細胞の作成)
  • 細胞の分化誘導方法(例:iPS細胞から神経幹細胞への誘導)
  • 生体材料そのもの(例:軟骨再生用の移植ゲル)

一方、実際にヒトに薬剤を投与する方法や、手術によって細胞を移植する行為は、「治療方法」に該当するため特許の対象外となります。

海外との比較:米国・欧州の考え方

米国では「医師の治療行為に関する特許」を認めつつも、特許権の行使を制限する免責規定(米国特許法第287条(c))が設けられています。

一方、欧州特許条約(EPC)では、「人体や動物の手術・治療・診断方法」は特許の対象外とされつつも、その方法で使用される物質や機器は特許可能と明示されています。

このように、審査実務や保護対象の範囲は各国で異なるため、出願時には国ごとの制度理解も必要です。

まとめ:審査基準を理解し、特許取得の可能性を最大化するために

ライフサイエンス分野における特許審査では、「人間を対象とした医療行為に関する方法」が原則として特許の対象外となる一方、医薬品、医療機器、ベクター、細胞製剤などの「物」やその製造・構造に関する発明は保護される可能性があります。

特許性の判断には、審査基準の正確な理解と、明細書・請求項の記載における工夫が必要不可欠です。

複雑な制度や実務にお悩みの場合は、ライフサイエンス分野に精通した専門家のサポートが有効です。

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