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メンタリストDaigo・書籍に筆者名として表示する行為は商標の使用か?

2012.08.31

伊藤 寛之

視聴率男DaiGoが真っ青 “メンタリスト”名乗れなくなるか?
この記事中に商標登録に詳しい弁理士が以下のコメントをしています。 
商標登録されると、たとえば映画やテレビで名称を使う場合は使用料が発生するし、商標権者は第三者の使用禁止も求めることもできます。原則、早い者勝ちで、トラブルも少なくない」
メンタリストの出願の詳細は、以下の通りです。
【出願番号】 商願2012-32498
【商標】 メンタリスト(MENTALIST)
【商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務】
9 録画済みDVD・ビデオテープ・ビデオディスク及びCD-ROM,電子出版物
16 印刷物,雑誌,新聞
メンタリストDaigoがテレビでその名称を名乗ることが商標権侵害にならないことは別の記事で述べました。
メンタリストDaigoが著名な芸名である場合には、書籍に付して使用しても商標権侵害にならないことも別の記事で述べました。
では、メンタリストDaigoが芸名として著名でない場合は、どうでしょうか?
以下の事件は、不使用取消に関するものですが、著作者名として書籍に名前を載せることは商標の使用ではない、と述べています。

そうすると、メンタリストDaigoが芸名として著名であるかどうかに関わらず、メンタリストDaigoの名の下で執筆活動を行うことは商標権侵害にならないことになります。

色々と検討しましたが、私が知っている商標法の下では、「商標登録されると、たとえば映画やテレビで名称を使う場合は使用料が発生するし、商標権者は第三者の使用禁止も求めることもできます」といえる根拠を見つけることはどうしてもできません。
東京高等裁判所 平成 1年 (行ケ) 178号

審決の理由

二 審決の理由の要点1 本件商標の構成(審決に「B」とあるは「A」の誤記)、指定商品、登録出願日ないし更新登録日は前項記載のとおりである。
2 原査定は、商標権存続期間更新登録願に添付された「登録商標の使用説明書」の写真(別紙(二))に示された書籍上の「B」の文字は著作者名として位置づけられるものであり、登録商標の使用とは認められないから、結局、この更新に係る登録商標は指定商品のいずれにも使用されていないものといわざるを得ず、したがつて、この出願の商標は商標法19条2項ただし書二号の規定に基づき、登録できないものと認める、として本願を拒絶したものである。
3 よつて、按ずるに、本件商標の使用の事実を示す書類(写真)によれば、商品「書籍」の表紙、背表紙に「B」の文字が表されていることは認められるが、これは、明らかに書籍の著作者名を表示したものとみられるものである。しかして、書籍の著作者名の表示は、著作物の著作者を表すために表示されるものであるから、
商品としての書籍に係る自他商品の識別標識として機能しているとは認め難いものである。してみれば、前記の書籍に表された「B」の文字は商標としての使用とみることができないから、本願の願書に添付された商標の使用の事実を示す書類(写真)によつては、本件商標は本願の出願前三年以内に日本国内において、通常使用権者により、その指定商品に使用されていないといわざるを得ない。したがつて、
本願は商標法19条2項ただし書二号に該当するとして拒絶した原査定は妥当であつて、取り消すことはできない。

裁判所の判断

理 由一 請求の原因一、二の事実(特許庁における手続の経緯及び審決の理由の要点)については、当事者間に争いがない。
二 取消事由の判断1 本件商標が別紙一に示されたとおり「B」の文字から構成され、旧第六六類「図書、写真及び印刷物類」を指定商品とすること及び本願の商標権存続期間更新登録願には「登録商標の使用説明書」として別紙二に示された写真が添付されたことは当事者間に争いがなく、かつ成立に争いのない甲第二号証(商標権存続期間更新登録願)によれば、本件商標は株式会社金園社が通常使用権者として商品「書籍」に付して別紙二にみられるような態様(書籍の表紙及び背表紙に「B」の文字が表示されていることは当事者間に争いがない。)で使用されており、別紙二の写真は、昭和五五年八月五日に撮影されたものであることが認められる。
2 商標法上商標の本質的機能は、商品の出所を明らかにすることにより、需要者に自己の商品と他の商品との品質等の違いを認識させること、すなわち自他商品識別機能にあると解するのが相当であるから、商標の使用といい得るためには、当該商標の具体的な使用方法や表示の態様からみて、それが出所を表示し自他商品を識別するために使用されていることが客観的に認められることが必要である。また、
商標法上商標が付される商品とは、流通の対象となる有体物そのものを指し、商品としての「書籍」についていえば、これを出版し販売することを業とする者がその出所の主体であり、かかる業務主体は、その使用に係る商標を介して、例えば、製本の堅牢さ、印刷の美しさ・正確さ、装丁の美しさ等につき自己の出所に係る商品である書籍の品質の良さを需要者に訴え、記憶にとどめさせることにより、自他商品の識別機能の発揮を期待するのである。
3 成立に争いのない乙第一号証ないし第七号証によると、通常、一般的に書籍の表紙には題号、著者名が、背表紙には、題号、著者名及び出版者名が、また、裏表紙には出版者名が表示されるものであることが認められるところ、別紙(二)にみられる表紙及び背表紙における表示の態様も、通常の一般的な書籍の表示態様と変わるところがないから、この使用態様におけるような表示のある書籍に接した需要者としては、「B」の文字をこの書籍の著作者名と認識し、かつ、背表紙の下部に表示された「金園社」が有体物である商品「書籍」の出所であり、これを出版し販売する業務の主体であると認識することは明らかである。したがつて、かかる一般的な書籍の表示態様と対比し、別紙(二)の使用態様における表示をみるかぎり、
有体物である商品「書籍」について出所を表示し自他商品の識別のための標識として機能しているのは「金園社」の表示であり、「B」の文字をもつて「自他商品の識別機能」を示すものと認めることは困難というほかない。
この点、原告は、需要者は書籍の商標として普通に行われているように表紙、背表紙に「B」の文字が表示されているのをみて同種の他の書籍と識別し、特定の出所から出た同一品質のものであると安心かつ信頼してその書籍を購入するものであるし、商標使用者としてはそれによつて自己の商品の販路、得意先(グツドウイル)の確保が期待できるから、使用態様における「B」の文字部分に商品識別機能がないとはいえない旨主張する。しかしながら、原告の右の主張は、商品としての「書籍」の意義について有体物としてだけでなく、その記述内容をもこれに含ませたうえ、
「B」の表示を介して需要者が認識する精神的な労作である著作物の同一性ないしはその信頼性についての識別機能をいうものであり、有体物である商品「書籍」を出版販売する義務主体の識別機能をいう商標本来の領域とは異なる領域に属することを論ずるものであるから、到底採用できない。したがつて、たとえ、別紙(二)の使用態様における表示が、社会通念上本件商標と同一性のあるものとしても、右の表示をもつて本件商標が商標法上使用されているとする原告の主張は理由がなく、本件商標が、商標法19条2項ただし書二号に当たるとして本願を拒絶した審決の判断には何ら誤りはない。

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