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複数の主体が関与する発明の特許を考える際に参考になる判決(眼鏡レンズの供給システム事件)

2010.08.13

伊藤 寛之

共同直接侵害についてのエントリーを書いていて頭に浮かんだのが、眼鏡レンズの供給システム事件(平成 16年 (ワ) 25576号 特許権侵害差止等請求事件 )です。
この事件で画期的だったのは、従来は、一人が請求項の全ての構成を実施することが特許権侵害の要件であるというのが通説的であったところ、複数の主体が関与することが予定されている場合は、複数の主体によって構成要件の全てが実施されていれば、特許権侵害が認定され、差し止めや損害賠償の問題は、システムを支配管理しているのが誰であるかに基づいて処理される、としたことです。
また、一方が他方の補助者的立場であるかどうかは関係がないっていっているのも面白いですね。


(2)本件訂正発明3上記(1)に述べたことからすれば,被告システムは,本件訂正発明3の技術的範囲にも含まれる。
(3)争点(1)(複数主体の関与)ア(ア)本件発明3は,「眼鏡レンズの供給システム」であって,発注する者である「発注側」とこれに対向する加工する者である「製造側」という2つの「主体」を前提とし,各主体がそれぞれ所定の行為をしたり,システムの一部を保有又は所有する物(システム)の発明を, 主として「製造側」の観点から規定する発明である。そして,「発注側」は,「製造側」とは別な主体であり,「製造側」の履行補助者的立場にもない(前提事実(3)ウ)。
(イ)この場合の特許請求の範囲の記載や発明の詳細な説明の記載は,2つ以上の主体の関与を前提に,実体に即して記載することで足りると考えられる。この場合の構成要件の充足の点は,2つ以上の主体の関与を前提に,行為者として予定されている者が特許請求の範囲に記載された各行為を行ったか,各システムの一部を保有又は所有しているかを判断すれば足り,実際に行為を行った者の一部が「製造側」の履行補助者ではないことは,構成要件の充足の問題においては,問題とならない。
(ウこれに対し,特許権侵害を理由に,だれに対して差止め及び損害賠償を求める)ことができるか,すなわち発明の実施行為(特許法2条3項 を行っている者はだれかは, )構成要件の充足の問題とは異なり,当該システムを支配管理している者はだれかを判断して決定されるべきである。
イ以上を前提に検討すると,被告が被告システムを支配管理していることは明らかであり,原告は,被告に対し,本件特許3に基づき,他の要件も満たす限り,被告システムの差止め及び損害賠償を求めることができる。

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