【SKIPの知財教室(IP Hack ®)】じっくり®ヒストリー 香水の発明者 エルネスト・ボー(ココ・シャネルと出会って「CHANEL N°5」を開発して大ヒット商品を生み出した発明家)
2025.06.13

AKI
私たちの身の回りには非常に多くの画期的なモノや手法であふれています。これらはすべて先人たちのアイデアによって実用化された数多くの発明のおかげです。シャネルの5番は、高い人気を持つハイグレードの香水として知られています。「シャネル」という名前は、オートクチュールの香水店を立ち上げたココ・シャネルから取られたものです。彼女は1914年、まったく新しい香水を作るためにある調香師と手を組みました。その調香師が、フランスで活動したエルネスト・ボーです。彼はシャネル N°5という香水を発明し、世界的な人気を獲得しました。今回はそんなエルネスト・ボーの生涯を振り返っていきましょう。
エルネスト・ボーの前半生(ロシアのアルフォン・ラレー社の石鹸研究室で調香師となり、「ブーケ・ド・ナポレオン」を開発する)
エルネスト・ボーは1881年、ロシアのモスクワで生まれました。当時、ロシアはフランスと深く結びついており、国内にはフランスの文化が定着していました。化粧水や香水を使うのもその一例です。フランスとロシアはこうした美容品の製造・販売でビジネスを行うため、合同資本による会社を設立しました。その中のひとつ、アルフォン・ラレー社はロシア最大の企業となり、ボーはラレー社の石鹸研究室に助手として入社しました。ここで調香の修行を積み、ボーは調香師としての腕前を上げていきました。一時は徴兵のために1900年にロシアを離れ、フランスで2年間の兵役に就きますが、帰国後も調香の腕を落とすことなく、香水の開発に携わることになります。1912年には、最初の香水として1812年のナポレオンによるロシア遠征におけるボロジノの戦いから100周年を記念して、「ブーケ・ド・ナポレオン」と題する香水を開発。さらに同年当時のロマノフ朝誕生300年を記念してつくられた「ブーケ・ド・キャサリン」をそれぞれアルフォン・ラレー社より発売しました。
同年、第一次世界大戦が勃発。これに伴い、ボーは再びフランスで従軍することになり、北欧の駐屯地で過ごしました。この地域には香水を作成するための植物や花々が豊富に生息しており、ボーは調香師として大きなヒントを得ました。
戦後、アルフォン・ラレー社は1917年のロシア革命で解体され、残っていたフランス人従業員はフランスに帰国しました。1919年、彼らは新たにラ・ボッカに研究所を設立し、ボーは研究所で再就職しました。前職で始めた、調香のためのアルデヒドの実験を再開しました。この実験で、長期的に持続する2つの香りを1919年から1920年にかけて完成させたのです。これがのちの「シャネルNo.5」と「シャネルNo.22」の原型となります。
エルネスト・ボーの後半生(ココ・シャネルと出会って「CHANEL N°5」を開発して大ヒット商品となる)
1914年、ボーはフランスで香水の販売店を営むココ・シャネルと出会います。
当時のフランスでは、大きく2種類の香りに分けられていました。一般的には園芸家から抽出した香水が好まれており、動物系の香りジャスミンなどのセクシーさを感じさせる香りは下品なものとして扱われていました。しかしシャネルは、フランスの現代女性たちはもっと自由な精神を持っているもので、そのような女性の心に刺さる香りが求められていると考えました。女性たちのニーズに応えるため、オートクチュールの香水を作りたいと考えたシャネルのために、彼女の恋人であるドミトリー・パブロヴィッチ大公が2人を引き合わせたのです。
ボーはこれまでに作り上げた10本の香水を、彼女のもとに届けました。シャネルが選んだのは、5番目のもの。シャネルはその年の5月5日、彼女自身のコレクションが行われることを理由に、ボーが提出した5番目の香水を選んだのです。この香水は「CHANEL N°5」と名付けられ、今日まで高い人気を保ち続ける看板商品となりました。
CHANEL N°5の発売から1年後、1922年に後継作となる「CHANEL N°22」も発売され、更なる評判が集まりました。その後もボーとシャネルの活躍は止まることを知らず、1925年には同じくシャネルから発売された「Gardénia」や1929年にはシャネルと前出のウェルテメール兄弟により設立されたシャネル・ブルジョワから発売された「Soir Paris」などの香水が登場し、世界的な人気を集めました。
1961年、ボーはパリの地でこの世を去りました。
今回はシャネルの5番の調香師エルネスト・ボーの生涯を振り返りました。現在までに多くの人に愛されるシャネルの香りは、当時のフランスにおいて革新的な発明でした。ココ・シャネルと彼の出会いは、まさに歴史を動かす大きな出来事だったのです。彼の生涯を知った上でシャネルの香りを嗅ぐと、また感じ方が変わってくるかもしれませんね。


