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提出書面が真正であることを証明する方法(認証総論)

2016.10.21

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無題

 特許権者等の名称や住所の変更を海外の特許庁へ届け出る場合、その変更を証明する書面や現地代理人に代理権があることを証明する書面の提出を求められることが多々あります。前者として代表的なものといえば登記簿謄本(履歴事項全部/一部証明書)になりますが、国によっては何らかの公的な証明を別途受けることを要求される場合があります。なぜなら、日本であれば登記簿謄本の原本は公正な第三者である公務員がその権限に基づいて作成した文書のため、文書の成立について真正であるとの強い推定が働きますが、海外特許庁においてはその文書が真正な証明書面であるかを知る術が無いからです。他方、代理権を証明する書面として代表的なものは委任状になりますが、これも当事者の署名だけでなく、きちんと公的な証明を受けるよう要求されることがあります。
 ここでいう公的な証明を特許事務的に見ますと、①外務省による証明であるアポスティーユ/公印確認、②法務大臣が任命する公証人による公証、③対象国の在日大使館/領事館が証明する領事認証、の3つに分けられます。
 まず、外務省による証明はアポスティーユと公印確認の2種類があり、いずれも認証の対象となる公文書を外務省へ提出すれば翌営業日の朝一には書類が完成します(しかも無料)。アポスティーユが外務省の手続のみで海外へ発送できる状態の書類が出来上がるのに対し、公印確認では在日大使館/領事館へ提出できる状態の書類が出来上がるという点で両者は異なります。つまり、アポスティーユは書類提出国に対して外務省が直接的に文書の証明をすることになりますが、公印確認は書類提出国の在日大使館/領事館に対して外務省がこの公文書に押された公印は真正のものですよと証明するにとどまるのです。公印確認はあくまでも領事認証を受けるための事前手続的なものであるということですね。
 次に、公証人による公証とは、公証役場において私文書が真正のものであることを証明してもらう手続となります。外務省でアポスティーユ/公印確認を受けるのは謄本等の公文書でしたが、公証の対象となるのは委任状や契約書といった私文書となります。ここでいう私文書とは国家機関や公務員等以外のものによって作成された文書全般を指します。外務省では公文書しか認証してもらえませんので、私文書に対してアポスティーユや領事認証が求められた場合には、公証役場で書類に公証を受け、その後に外務省の証明を受けるという流れになります。もっとも、東京都内の公証役場であれば公証を受ける際にアポスティーユ/公印確認も同時に受けることが出来るワンストップサービスを実施しておりますので、公証役場の後に外務省へ赴く必要はありません。
 また、「謄本に英訳をつけて、それらを一括で領事認証してくれ」という指示を受けることもあります。このような場合は謄本に英訳を添付したものを私文書として公証してもらうことになります。公証費用は高いので(例:委任状¥9,000、謄本英訳文¥11,500)、現地代理人に文書を”legalize”してくれと言われた場合には、それが英訳も含めた領事認証なのか、謄本のみの領事認証なのかをきちんと確認しなければ無駄なコストをかけてしまうことになるので注意が必要です。
 最後に、領事認証とは各国の在日大使館/領事館において書類を認証してもらう手続になります。これはアポスティーユの根拠となるハーグ条約に加盟していない国(アルジェリア、インドネシア、中東諸国等)に対して提出する書類に、外務省のお墨付きをもらったうえで更に在日大使館で認証してもらう手続になります。この領事認証に際して要求される書類や手続が各国毎に異なるのはいうまでもなく、書類の申請時間や受領時間も事細かに別れているため非常に煩雑です(だからこそアポスティーユのような制度が生まれたわけです)。大使館への事前連絡・要件確認はマストですね。
 以上が総論です。今後のブログでは、①外務省でのアポスティーユ/公印確認、②公証役場での公証、③各国在日大使館/領事館での領事認証について掘り下げて書いていきますのでお楽しみに。
 
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