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米国のActive inducementの要件が最高裁で審理される

2010.10.14

伊藤 寛之

Supreme Court to Hear Case on Inducing Patent Infringement
Global-Tech Appliances, Inc. v. SEB S.A. (Supreme Court 2010)

Active inducementの要件が最高裁で見直されるという記事がありました。
米国では、二種類の間接侵害があります。271条(b)の間接侵害は、active inducementと呼ばれ、侵害を積極的に誘起したことに対する責任です。271条(c)の間接侵害は、重要部品を製造販売したことによる責任です。271条(c)は、日本の間接侵害によく似ていますが、271条(b)のactive inducementは米国独自のものです。


35 U.S.C. 271 Infringement of patent.
(b) Whoever actively induces infringement of a patent shall be liable as an infringer.
(c) Whoever offers to sell or sells within the United States or imports into the United States a component of a patented machine, manufacture, combination, or composition, or a material or apparatus for use in practicing a patented process, constituting a material part of the invention, knowing the same to be especially made or especially adapted for use in an infringement of such patent, and not a staple article or commodity of commerce suitable for substantial noninfringing use, shall be liable as a contributory infringer.


条文に記載されているのは、”actively induces infringement”のみですので、具体的にどのような行為がactively induceに該当するのかは非常に曖昧です。
今回の最高裁に見直しを求めたのは、行為者の主観的要件についてです。
271条(b)の適用についての有名な判決がDSU Medical Corp. v. JMS Co., Ltd., 471 F.3d 1293 (Fed. Cir. 2006) (en banc)ですが、この判決では、「行為者が特許の存在を知っていること」を要件にしました。一方、最近の判決である、SEB (T-Fal) v. Montgomery Ward & Co., 594 F.3d 1360 (Fed. Cir. 2010)では、潜在的な特許権侵害に対して「意図的な無関心」の場合にも、主観的要件は充足しうるとしました。
後者の場合、前者の場合よりもかなり広い範囲でactive inducementによる侵害が認められてしまいます。271条(b)は、主観的要件のみで構成されているので、主観的要件が緩くなってしまうと非常に多くの行為が特許権侵害となってしまう可能性がでてきてしまうので、あまり緩くするのは問題があると思います。
なお、日本の間接侵害では、全ての条項で客体的要件が規定されています。


(侵害とみなす行為)
第101条 次に掲げる行為は、当該特許権又は専用実施権を侵害するものとみなす。
1.特許が物の発明についてされている場合において、業として、その物の生産にのみ用いる物の生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為
2.特許が物の発明についてされている場合において、その物の生産に用いる物(日本国内において広く一般に流通しているものを除く。)であつてその発明による課題の解決に不可欠なものにつき、その発明が特許発明であること及びその物がその発明の実施に用いられることを知りながら、業として、その生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為
3.特許が物の発明についてされている場合において、その物を業としての譲渡等又は輸出のために所持する行為
4.特許が方法の発明についてされている場合において、業として、その方法の使用にのみ用いる物の生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為
5.特許が方法の発明についてされている場合において、その方法の使用に用いる物(日本国内において広く一般に流通しているものを除く。)であつてその発明による課題の解決に不可欠なものにつき、その発明が特許発明であること及びその物がその発明の実施に用いられることを知りながら、業として、その生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為
6.特許が物を生産する方法の発明についてされている場合において、その方法により生産した物を業としての譲渡等又は輸出のために所持する行為


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