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DNAは特許の対象ではないとのDyk判事(CAFC判事)の考え

2010.09.28

伊藤 寛之

今年の3月のMyriad事件では、”isolated DNA”は、特許の対象ではないと判示して、大きな話題になりました。
ただ、この判決は、一地方裁判所の一人の裁判官の考えに過ぎないので、先例的価値が皆無であり、
しかも、論点が101条の解釈に関わる法律的なもので、CAFCは、de novoで審理しますので、
現時点では、無視してもいいものだと思います。de novo審理の意味については、「CAFCは地裁判決を4つの基準で再検討する(Standard of reveiw)」を参照。
この事件は、現在CAFCに係属していて、10月22日が最初の書面提出期限ですので、判決がでるのは未だ先になりそうです。
この事件に関連して、CAFCの判事であるDyk判事が地裁の判断を指示するような考えを持っていることが別の判決から明らかになったとの記事がありました。

Guest Post: An Interesting Preview of Myriad?

CAFCでは、パネルが3人で構成され、そのうちの二人が賛同すれば、major opinionになって、判例が形成されます。Dyk判事が地裁判決を指示するのであれば、Dyk判事がパネルに選ばれた場合には、あと一人の判事の賛成があれば、「isolated DNAが特許ならない」という衝撃の判例法ができてしまいます。
Dyk判事の意見は、「自然物とほとんど同じものなのに、”isolated”の形では自然には存在していないからといって特許を付与していいものか?”isolated”の形では自然には存在していないという理由で、葉っぱに特許を与えるようなものだ」というものです。
地裁判決は、CAFCでは一蹴されると思っていましたので、Dyk判示の考えは驚きです。
バイオ分野の産業の育成を促進するという観点から、遺伝子特許の成立を根本的に否定する判決をCAFCが出すとは考えにくいですが、今後の成り行きを注視する必要があります。

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