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CAFCは地裁判決を4つの基準で再検討する(Standard of reveiw)

2010.09.17

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CAFCの判決を読んでいると、最初に地裁判決をreviewするための基準が述べられます。
reviewの基準は、以下の4つあります。
de novo
「最初から」という意味であり、地裁判決を考慮することなく判断します。
CAFCは、法律審であり、事実問題に関しては地裁判決を尊重しますが、法律問題については地裁判決を無視します。事実問題と法律問題との切り分けは非常に難しく、ある争点が事実問題であるか法律問題であるかが激しく争われることがあります。
実際、マークマン事件では、クレーム解釈が事実問題が法律問題かが争点になって最高裁で争われた結果、法律問題であると判断されました。
それ以外にも、特許法の条文の解釈や、禁反言が適用されるべきかどうかなどが法律問題であると理解されています。このような問題に関しては、CAFCはde novo審理を行ないます。判決文でも、はっきり述べられます。
de novoでreviewされる場合、非常に高い確率で地裁判決がひっくり返りますので、地裁で敗訴したものは、争点が法律問題であると主張して、de novoで審理すべきであると主張します。
clearly erroneous
substantial evidence
CAFCは、法律審であり、事実問題の審理は基本的には行ないません。そこで、事実問題については地裁の判断を基本的に尊重します。そこで、事実問題は、clearly erroneousかsubstantial evidenceのどちらかの基準でreviewさます。
米国では、陪審員が関与する裁判(jury trial)と裁判官のみによる裁判(bench trial)があります。
jury trialでは、juryが事実問題についての判断を行い、bench trialでは裁判官が事実問題についての判断を行ないます。Juryの判断は、裁判官の判断よりも尊重されますので、
juryによる事実認定→substantial evidence基準
裁判官による事実認定→clearly erroneous基準

でreviewされます。
clearly erroneous基準では、基本的に地裁の判断を尊重しますが、その判断内容明らかにおかしい場合に限って、地裁判断を覆します。多くの場合は、地裁に差し戻して審理をやり直すことになります。de novoとは違って、覆すのは非常に難しいと考えられています。

substantial evidence基準
では、juryが認定した事実が証拠によって裏付けられているかどうかのみによって判断されます。陪審裁判制度の元では、裁判官はjuryの判断を覆すことをためらうので、juryの事実認定をCAFCで争うことは非常に難しいと考えられています。
abuse of discretion
地裁の裁判官が裁量で決定していいとされている事項については、その決定内容が「濫用」であると判断される場合を除いては、覆りません。
裁量事項としては、差し止めを認めるかどうか、故意侵害による損害額の増額を認めるか、不公正行為による権利行使不能を認めるか、移送を認めるかどうかなどがあります。
E.D.Tex(テキサス州東部地裁)は、特許権者の勝訴率が非常に高いので、特許権者が大好きな裁判所です。
被疑侵害者は、何とかして、この裁判所以外で裁判をしたいと考えて、他の裁判所への移送を請求します。
この請求を認めるかどうかは、地裁の裁判官の裁量事項なので、CAFCは通常は口出ししません。
E.D.Texの裁判官は、特許訴訟が大好きなので、移送の申立があってもほとんど認めることがありませんでした。
In re TS Tech USA Corp.の事件でも、移送の申立は認められませんでした。
この判断に対して、CAFCに控訴したところ、CAFCは、地裁の判断は、abuse of discretionであるとして、移送の申立を認めました。それからは、E.D.Texには、移送の申立が殺到しているそうです。

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