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102条(e)について

2010.07.12

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Patently-oで、102条(e)の範囲が広がったという記事がありました。
Federal Circuit Extends the Scope of 102(e) “Secret Prior Art”
http://www.patentlyo.com/patent/2010/07/federal-circuit-extends-the-scope-of-102e-secret-prior-art.html
読んでみたところ、仮出願があった場合に、102条(e)の基準日が、仮出願日まで遡れるかどうかが問題になって、CAFCは、「遡れる」と結論づけたようです。
102条(e)は、米国出願が公開された場合、その米国出願後であって公開前の出願を拒絶する規定で、
日本特許法の29条の2に類似した規定です。公開前にも関わらず、後願を排除することから、”Secret Prior Art”と呼ばれています。
日本の29条の2と102条(e)との違いは、日本の29条2が実質的同一の範囲の後願にしか及ばず、進歩性判断には用いられないのに対し、102条(e)が非自明性の判断にも使われることです。ほとんど全ての国は、日本と同様の制度を有しているので、国際的も非常に奇異な条文であると言えます。
また、102条(e)の後願排除効の基準日は、米国出願日であって、パリ優先権を伴なう出願であっても、パリ優先日が基準日とはなりません。この基準日については、ヒルマー事件において争われて、決着がついたことからヒルマードクトリンと言われています。
上記の通り、102条(e)は非常に強い後願排除効を有しているので、優先権の期間の分、後願排除効の基準日が遅くなるのを黙って見過ごすわけには行きません。そこで、企業によっては、日本出願をせずに、米国に最初の仮出願を行い、その仮出願を基礎として、日本や米国の出願をするという戦略を取っています。
上記の判決は、このような戦略が適切であったことを確認したものであるという位置づけになります。
ところで、102条(e)の先願になるのは、米国出願か、英語で公開されたPCT出願です。日本語のPCT出願はどうあがいても、102条(e)の先願にはなりません。国内移行日は、1999年の改正前までは102条(e)の先願になりましたが、現在は、国内移行しても駄目です。
ではどうするばいいか?
→PCT出願をした後、そのPCT出願を基礎として米国に継続すればOKです。継続出願は米国出願ですので、継続出願日が102条(e)の基準日になります。
なお、優先日から1年6月後に国際公開がなされて、国際公開の公報は102条(a)の先行技術になりますので、継続出願を行って、102条(e)の基準日を獲得する必要がある機会は少ないかも知れません。
ただし、米国の審査官は、米国特許を引例として採用する傾向があるので、後願排除効を実質的に強めるという観点では、国際公開日の後であっても、継続出願で米国移行する価値があるかも知れません。
なお、102条(e)は、先願と後願とで出願人が同じ場合は、非自明性の判断には利用されません。

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