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プロダクト・バイ・プロセスクレームの最高裁判決は実案への影響の方が大きいかも。

2015.08.09

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世間を騒がせているプロダクト・バイ・プロセスクレームの最高裁判決ですが、特許庁の運用変更からも分かるように化学分野だけではなく、機械分野にも影響が及びます。
ただ、以下の解説に示すように、プロダクト・バイ・プロセスクレームを製造方法クレームに変更する訂正は、明瞭でない記載の釈明に該当するので、その訂正が権利範囲の拡張又は変更に該当しない限り認められることになります。
多くの場合は、このような訂正によって権利範囲の拡張又は変更にはならないはずです。そうすると、実質的には、プロダクト・バイ・プロセスクレームを製造方法クレームに変更する訂正は実質的に無条件に認められて、実務上のインパクトがそれほど大きくないことになります。
 ところで、実用新案にも、製造方法っぽく構造を規定しているものがあり、このようなクレームがプロダクト・バイ・プロセスクレームであると認定される可能性があります。その場合、そのクレームは、構造で特定することが不可避又は不合理であると立証されない限り、明確性違反の無効理由を有することになります。そして、実案の保護対象を考えると、構造で特定することが不可避又は不合理である場合は多くないと思います。また、実案では、製法は保護されないので、プロダクト・バイ・プロセスクレームを製法クレームに変更することも当然できません。以上の点を考慮すると、実案のプロダクト・バイ・プロセスクレームは、そのまま無効になってしまう可能性が高いと思います。このような観点では、プロダクト・バイ・プロセスクレームの最高裁判決は実案への影響の方が大きいかも知れません。
審判制度に関するQ&A | 経済産業省 特許庁
訂正審判(PDF:21KB)
《プロダクト・バイ・プロセス・クレームに関する訂正》
Q10:プロダクト・バイ・プロセス・クレーム(物の発明に係る請求項にその物の製造方法が記載されている場合)について、平成 27 年 6 月の最高裁判決を受け、平成 27 年 7 月 6 日に「プロダクト・バイ・プロセス・クレームに関する当面の審査の取扱について」がホームページで公表されました。
これによると、『最後の拒絶理由通知後、拒絶査定不服審判請求時又は特許法第 50 条の 2 の通知を受けた後に、「その物の製造方法の記載」を、単に、構造や特性といった物としての記載にする補正又は物の発明においてその物の製造方法が記載されている場合に、単に、その物の製造方法の発明にする補正は、通常、明りょうでない記載の釈明(特許法第 17 条の 2 第 5 項第 4 号)に該当する補正であると認めることとします。』とされています。
訂正審判において、物の構造又は特性により特定する訂正や、物の製造方法にする訂正を請求する際は、審査の取扱と同様に、明瞭でない記載の釈明に該当するのでしょうか。
A10:訂正審判における、特許法第 126 条第 1 項ただし書き第 3 号に規定する「明瞭でない記載の釈明」については、補正に関し特許法第 17 条の 2第 5 項の適用において考慮される「拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る」といった要件は存在しません。したがって、物の発明に係る請求項にその物の製造方法が記載されている場合に、物の構造又は特性により特定する訂正や、物の製造方法にする訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であると認められます。
しかしながら、訂正の要件は、補正の要件と異なり「実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであつてはならない。」(特許法第 126条第 6 項)とされ、この点も考慮する必要があります。
訂正審判におけるプロダクト・バイ・プロセス・クレームの取扱いについては、今後、事例の分析を進めつつ、法令に基づき、事案に応じて審判合議体としての判断を審決の中で示していきます。

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