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プロダクト・バイ・プロセスクレームの最高裁判決を受けた特許庁の運用変更

2015.07.07

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最高裁判決では、プロダクト・バイ・プロセスクレームは原則として不明確であり、構造で特定することが不可能・非実際的である場合に限ってプロダクト・バイ・プロセスクレームが明確になるという判断がなされました。
この判断を受けて、特許庁が運用の変更を発表しました。
プロダクト・バイ・プロセス・クレームに関する当面の審査・審判の取扱い等について | 経済産業省 特許庁
○ 物の発明に係る請求項にその物の製造方法が記載されている場合は、審査官が「不可能・非実際的事情」があると判断できるときを除き、当該物の発明は不明確であると判断し、拒絶理由を通知します。
※「不可能・非実際的事情」とは、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情をいいます。
※後に無効理由を含む特許となったり、第三者の利益が不当に害されたりすることがないよう、拒絶理由を通知することで、出願人に、「不可能・非実際的事情」が存在することの主張・立証の機会や、反論・補正の機会を与えることとします。
○ 出願人は、当該拒絶理由を解消するために、反論以外に、以下の対応をとることができます。
ア.該当する請求項の削除
イ.該当する請求項に係る発明を、物を生産する方法の発明とする補正
ウ.該当する請求項に係る発明を、製造方法を含まない物の発明とする補正
エ.「不可能・非実際的事情」についての意見書等による主張・立証
○ 出願人の「不可能・非実際的事情」についての主張・立証の内容に、合理的な疑問がない限り(通常、拒絶理由通知時又は拒絶査定時に、審査官が具体的な疑義を示せない限り)、審査官は、「不可能・非実際的事情」が存在するものと判断します。


詳細な内容は、以下のPDFファイルに記載されています。
「プロダクト・バイ・プロセス・クレームに関する当面の審査の取扱いについて」
「不可能・非実際的事情」に該当しない例として、「単に、製造方法で記載するほうが分かりやすいとの主張のみがなされている場合」が挙げられています。構造で特定するよりも製法で特定する方が発明を把握しやすいケースも存在しますが、そのような場合でも、今後は、プロダクト・バイ・プロセス・クレームは作製できません。素直に製法クレームを作製しなさい、ということでしょう。
また、「凹部を備えた孔に凸部を備えたボルトを前記凹部と前記凸部とが係合するように挿入し、前記ボルトの端部にナットを螺合してなる固定部を有する機器。」のような所謂流し書きクレームは、非常に広く使用されており、発明によっては分かりやすい場合も多いですが、今後は、このようなクレームは、経時的要素が含まれていることを理由に原則不可となります。但し、以下のように表現を少し変更することでOKになります。
「凹部を備えた孔に凸部を備えたボルトが前記凹部と前記凸部とが係合した状態で挿通されており、前記ボルトの端部にナットを螺合してなる固定部を有する機器。」
このように、最高裁判決の影響は、バイオ・化学分野だけでなく、機械・電気分野の実務にも大きな影響があります。

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