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部分意匠の範囲をどのように規定すればいいのかは悩ましい→意匠出願的特許出願

2016.06.10

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全体意匠は、ほぼ確実にデザイン変更で逃げられてしまうので、他社牽制のための意匠出願は、部分意匠出願をすることになります。部分意匠は、一般に、意匠登録を受けようとする部分の範囲(実線の範囲)が狭いほど、他社牽制効果が高くなります。そこで、デザインの特徴が現れるギリギリのところまで、実線の範囲を狭くしますが、狭くし過ぎると、デザインの特徴が喪失してしまって、公知意匠と区別ができなくなってしまいます。その匙加減が非常に難しいです。

特許であれば、後から自由に減縮すればいいので、ものすごく広い請求項にチャレンジすることができます。また、たくさん従属項を作成できるので、段階的に権利範囲を狭くすることができます。

部分意匠の場合、実線の範囲を段階的に広くすることが、特許の従属項に対応しますが、1件の意匠出願には1つの範囲しか指定できず、事実上、補正もできないので、一発勝負になります。実線の範囲を段階的に広くするには、多数の意匠を出願する必要がありますが、予算的に無理な場合があります。

そのような場合には、意匠出願的特許出願がお勧めです。特許出願中の図面中に、将来、部分意匠にする可能性がある部位を丸で囲っておいて、明細書には、「丸が囲った部分が、デザイン的な特徴を有する部分である」と記載しておきます。こうしておけば、将来、特許を意匠に変更した場合、ほぼ確実に、出願日の遡及効が得られます。丸で囲った部分が10箇所あれば、10個の意匠出願を行ったような感じになります。
なお、範囲を明示していない場合でも、特許庁は通常、部分意匠への変更を認めますし、裁判所も認めています。ただ、範囲を特許出願において明示しておいた方が確実だと思います。
http://www.jpaa.or.jp/activity/publication/patent/patent-library/patent-lib/201309/jpaapatent201309_021-033.pdf

このような意匠出願的特許出願は、他社牽制効果が非常に高いと思います。様々な範囲が明細書に記載されているので、将来、どのような部分意匠出願が出されるのかが予想が困難であり、しかも、部分意匠出願の登録率は非常に高いので、実際に権利化される可能性が高いからです。

また、「登録になる可能性が高い」という事実は、実際には登録にならない部分についてもある程度の牽制効果が発生することを意味します。意匠の場合、登録にならない部分意匠は、公開されないので、その意匠登録出願の存在すら知らされません。一方、特許では、登録にならない部分も「登録される可能性」を有した状態で公開されることになります。競合にとっては嫌な存在だと思います。

競合があるデザインで製品を販売→そのデザインをカバーする部分意匠出願→競合がデザイン変更→変更後のデザインをカバーする部分意匠出願、というような感じで競合のデザインに合わせて部分を設定した部分意匠出願は非常に有効だと思います。

意匠出願的特許出願のデメリットは、国内優先をした場合に、意匠出願の出願日が繰り下がってしまうことです。優先権が効かないのです。

また、1つの特許を複数の意匠出願に変更することができます。これができるので、意匠出願的特許出願において、特許から大量の意匠出願に変更しても費用が比較的抑えられます。

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